【キーエンスKV】立ち下がり(DIFD)命令の指令方法とラダープログラム例

00_【キーエンスKV】立ち下がり(DIFD)命令の指令方法とラダープログラム例

「立ち下がり」命令とは、キーエンスKVシリーズにおける実行条件がON→OFFになったときに1スキャンだけONするラダープログラム命令です。

立ち下がり命令は、別名ディフダウン命令立ち下がりパルスと呼ぶことがあります。

立ち下がり命令を用いることにより「スイッチを押した後、離した瞬間にランプが点灯する回路」を簡単に作ることができます。

この記事では、キーエンスKVシリーズにおける立ち下がり命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。

注意
この記事中のラダープログラムはKV STUDIO Ver.10で作成しており、対応機種はKV-N24に設定してあります。
メモ
オルタネート命令はKV-8000・KV-7500/7300・KV-5500/5000/3000・KV-1000・KV-nanoシリーズで使用可能です。※2019年12月現在

キーエンスKVシリーズでは、対となる立ち上がり(DIFU)命令が用意されています。立ち上がり(DIFU)命令については以下のページで解説しております。

00_【キーエンスKV】立ち上がり(DIFU)命令の指令方法とラダープログラム例 【キーエンスKV】立ち上がり(DIFU)命令の指令方法とラダープログラム例

1. 立ち下がり(ディフダウン)命令の指令方法

立ち下がり(ディフダウン)命令には、1種類の指令方法があります。

  • DIFD:立ち下がり(ディフダウン)

DIFDは、微分(differential)とダウン(down)の略です。(だと思います。)

メモ
立ち下がり(ディフダウン)命令に微分実行型はありません。また、扱うデータの型を指定する「サフィックス」に対応した命令ではありません。

DIFD:立ち下がり(ディフダウン)命令

立ち下がり(ディフダウン)命令は”DIFD”と指令します。

こちらがDIFD命令を使用したラダープログラム例です。

10_DIFD命令

このラダープログラムでは、入力条件である入力リレーR000がON→OFFになった後の1スキャンだけ内部補助リレーR1000がONします。

ラダープログラムのスキャンとは、プログラム先頭からEND命令までの制御処理が一巡する時間のことで、長くても10ms(0.01秒)程度です。※私の経験上

つまり、DIFD命令でONするデバイス(↑でいうR1000)は、人間の感覚からすると”極一瞬”しかONしません。

タイムチャートは以下のようになります。

10_タイムチャート

入力リレーR000がON→OFFになると、1スキャンだけ内部補助リレーR1000がONします。このタイムチャートでは1マスを1スキャンとしています。

この時、入力条件がONしている時間は関係ありません。入力条件がOFF→ONになった瞬間に出力条件がONします。

先ほどのラダープログラムは、KV STUDIOの回路上でDIFD R1000と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。

10_命令挿入

2.【例題①】立ち下がりの自己保持回路

下記仕様のラダープログラムを立ち下がり(ディフダウン)命令を用いて作成します。

仕様
入力リレーR000がON→OFFになった瞬間に、出力リレーR500がONし続ける。(自己保持回路)
その後、入力リレーR001がON→OFFになった瞬間に、出力リレーR500はOFFする。

ON→OFFになった瞬間を作るために、立ち下がり(DIFD)命令を使用します。

タイムチャート

タイムチャートは以下のようになります。

例題①_タイムチャート

出力リレーR500をONする条件は「入力リレーR000がOFFになった瞬間」で、OFFする条件は「入力リレーR001がOFFになった瞬間」です。

どちらも入力条件がOFFになった瞬間なので違和感があるかもしれません。

※入力リレーがONしている時間は関係ありません。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題①_ラダープログラム

入力リレーR000を実行条件とするDIFD命令を作成します。これにより入力リレーR000がON→OFFになった瞬間にR1000がONします。(1行目)

同じく、R001の立ち下がりをR1001で作成します。(2行目)

作成したR1000とR1001を用いて出力リレーR500の自己保持回路を作成します。この自己保持回路のON条件はR000の立ち下がりであるR1000で、OFF条件はR001の立ち下がりであるR1001となります。

以上より、出力リレーR500は「入力リレーR000がOFFになった瞬間にON」して、「入力リレーR001がOFFになった瞬間にOFF」します。

シミュレータの動作

シミュレータを実行している様子は以下のようになります。

例題①_シミュレータ

入力リレーR000がON→OFFになった瞬間に、出力リレーR500がONし続けます。(自己保持回路)

その後、入力リレーR001がON→OFFになった瞬間に、出力リレーR500はOFFします。

3.【例題②】 実行条件が論理積の立ち下がり命令

下記仕様のラダープログラムについて解説します。

仕様
入力リレーR000とR001がON→OFFになった瞬間※に、出力リレーR500がONし続ける。(自己保持回路)
その後、入力リレーR002がONすると出力リレーR500はOFFする。
※ここではR000とR001が両方ONした状態で、どちらか一方がOFFした状態を指します。

入力リレーR000とR001が両方ONした状態で、どちらか一方がOFFした状態を作る必要があります。

【例題①】では出力リレーR500をOFFする条件はR001の立ち下がりでしたが、今回はR002になります。(立ち下がりではない)

タイムチャート

タイムチャートは以下のようになります。

例題②_タイムチャート

入力リレーR000とR001がON→OFFになった瞬間に、出力リレーR500がONします。

その後、入力リレーR002がONすると出力リレーR500はOFFします。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題②_ラダープログラム

入力リレーR000とR001を実行条件とするDIFD命令を作成します。これにより入力リレーR000とR001がON→OFFになった瞬間にR1000がONします。(1行目)

作成したR1000を用いて出力リレーR500の自己保持回路を作成します。この自己保持回路のON条件はR000の立ち下がりであるR1000で、OFF条件はR002となります。

シミュレータの動作

シミュレータを実行している様子は以下のようになります。

例題②_シミュレータ

各デバイスは、黄緑色に塗りつぶされるとONになっている状態です。

入力リレーR000とR001が両方ON→どちらか一方がOFFになった瞬間に、出力リレーR500がONし続けます。(自己保持回路)

その後、入力リレーR002がONすると出力リレーR500はOFFします。

4. おわりに

キーエンスKVシリーズにおける立ち下がり(ディフダウン)命令について解説しました。

以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。

ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。

各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。

ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。

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