三菱電機製シーケンサQシリーズにおける「ビットデバイス出力反転」命令とは、指定したビットデバイスのON/OFF状態を反転させるラダープログラム命令です。
ビットデバイスとは「出力リレー(Y)」や「補助リレー(M)」といったデバイス1点が1ビットのデバイスのことを指します。
ビットデバイス出力反転命令を用いることにより「スイッチが押されるたびにランプの点灯/消灯が切替わる回路」や「一定周期でランプが点滅するフリッカー回路」を簡単に作ることができます。
この記事では、三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるビットデバイス出力反転命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサQシリーズにおいて、ビットデバイス出力反転命令は以下のCPUで使用することが可能です。
Basic | :ベーシックモデルQCPU |
High performance | :ハイパフォーマンスモデルQCPU |
Process | :プロセスCPU |
Redundant | :二重化CPU |
Universal | :ユニバーサルモデルQCPU |
LCPU | :LCPU |
※MELSEC-Lシリーズも含まれていますがご了承ください。
三菱電機製シーケンサFXシリーズにはビットデバイス出力反転命令は存在しません。代わりに交番出力(ALT)命令が存在します。
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける交番出力(ALT)命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【三菱FXシリーズ】交番出力(ALT)命令の指令方法とラダープログラム例目次
1. ビットデバイス出力反転命令の指令方法
ビットデバイス反転出力命令には、1種類の指令方法があります。
FF | :ビットデバイス出力反転命令 |
FFは、フリップフロップ(flip-flop)の略です。(だと思います。)
FF:ビットデバイス出力反転命令
ビットデバイス出力反転命令は”FF”と指令します。
こちらがFF命令を使用したラダープログラム例です。
このラダープログラムでは、入力条件である入力リレーX0がONするたびに出力リレーY0のON/OFF状態が切替わります。
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーX0がONするたびに、出力リレーY0のON/OFFが切替わります。
このとき入力条件がONしている時間は関係ありません。入力条件がONしている間、毎スキャン出力リレーY0がON/OFFが高速で切替わってしまうこともありません。
入力条件がOFF→ONになった瞬間に出力条件の状態が切替わります。
先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で FF Y0 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。(小文字でもOKです。)
2.【例題①】立下りパルスのオルタネイト回路
下記仕様のラダープログラムをビットデバイス出力反転命令を用いて解説します。
押して離した瞬間、つまりON→OFFになった瞬間は立下りパルスやディフダウンと表現することがあります。
本例題では、立下りパルス(PLF)命令を使用して、立下りパルスを作ります。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押して離した瞬間に、ランプ(Y0)の点灯/消灯の状態が切替わります。
このとき、スイッチ(X0)を押している時間は関係ありません。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーX0がON→OFFになった瞬間に、出力リレーY0のON/OFFの状態が切り替わります。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
入力条件を入力リレーX0とする立下りパルス(PLF)命令を用いて、スイッチ(X0)が押して離した瞬間にONする立下りパルスを作ります。(1行目)
立上りパルス(PLF)命令で指定された補助リレーM0は、X0がON→OFFになった瞬間に1スキャンだけONします。
この、X0の立下りパルスを入力条件とするビットデバイス出力反転(FF)命令を作ります。(2行目)
ビットデバイス出力反転(FF)命令で指定された出力リレーY0は、補助リレーM0がONする度にON/OFFの状態が切替わります。
3.【例題②】フリッカー回路
下記仕様のラダープログラムをビットデバイス出力反転命令を用いて解説します。
※)点灯:1秒、消灯:1秒
よくあるフリッカー回路ですが、今回はタイマリレー(T)とビットデバイス出力反転命令を用いて作成します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押している間、ランプ(Y0)が2秒周期で点滅します。
ビットデバイス出力反転命令の特性上、ランプ(Y0)が点灯している時にスイッチ(X0)を離すとランプ(Y0)点灯し続けますが、今回はこれでOKとします。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーX0がONしている間、出力リレーY0が2秒周期でON/OFFします。
繰り返しになりますが、出力リレーY0がONしている時に入力リレーX0がOFFすると、出力リレーY0はONし続けます 。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
入力リレーX0を入力条件とするタイマリレーT0を用意します。このT0のb接点でT0自身をOFFすることより、T0のa接点は1秒周期で1スキャンのみONします。
1秒周期で1スキャンのみONするT0のa接点を入力条件とするビットデバイス出力反転命令を用いて、出力リレーY0のON/OFF状態を1秒ごとに切替えます。
ビットデバイス出力反転命令を使用せずにフリッカー回路を作る方法は他にも数多く存在します。フリッカー回路については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【ノウハウ初級】フリッカー回路(点滅回路)のラダープログラム例【三菱FX】 【ラダープログラム】フリッカー回路(点滅回路)の練習問題①【三菱FX】 【ラダープログラム】フリッカー回路(点滅回路)の練習問題②【三菱FX】4. おわりに
三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるビットデバイス出力反転命令について解説しました。
同じ三菱電機製シーケンサFXシリーズではビットデバイス出力反転(FF)命令は存在せず、代わりに交番出力(ALT)命令が存在します。
他にもQシリーズでは使えた命令がFXシリーズだと使えないものがありますので、使用するシーケンサの取説をご参照ください。
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