「時計データの変換(秒→時分秒)」命令とは、三菱電機製シーケンサQシリーズにおける指定したデバイス値を秒のデータと見なして、時・分・秒に変換した値を3ワード長のデバイスに変換するラダープログラム命令です。
この記事では、三菱電機製シーケンサQシリーズにおける時計データの変換(秒→時分秒)命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
逆の時計データの変換(時分秒→秒)(SECOND)命令の指令方法については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【三菱Qシリーズ】時計データの変換(時分秒→秒)(SECOND)命令の指令方法とラダープログラム例三菱電機製シーケンサQシリーズにおいて、時計データの変換(秒→時分秒)命令は以下のCPUで使用することが可能です。
Basic | :ベーシックモデルQCPU |
High performance | :ハイパフォーマンスモデルQCPU |
Process | :プロセスCPU |
Redundant | :二重化CPU |
Universal | :ユニバーサルモデルQCPU |
LCPU | :LCPU |
※MELSEC-Lシリーズも含まれていますがご了承ください。
目次
1. 時計データの変換(秒→時分秒)命令の指令方法
時計データの変換(秒→時分秒)命令には、2種類の指令方法があります。
HOUR | :連続実行形 |
HOURP | :パルス実行形 |
HOURは、時間(hour)の意味です。
HOUR:連続実行形(基本の形)
連続実行形の時計データの変換(秒→時分秒)命令は”HOUR”と指令します。
こちらがHOUR命令を使用したラダープログラム例です。
このラダープログラムでは、入力条件であるX0がONしている間、データレジスタD0・D1のデバイス値を秒のデータと見なし、以下のように時・分・秒に変換したデータをD10~D12に格納します。
D10 | :時 |
D11 | :分 |
D12 | :秒 |
先ほどのラダープログラムの場合、例えばデータレジスタD0=5680が格納された状態でHOUR命令を実行したとします。その場合、時計データは1時間34分40秒と見なされD10=1、D11=34、D12=40が格納されます。
その時のデバイスモニタは以下のようになります。
5680秒を時間に変換すると1時間34分40秒になるので、D10~D12には各々上記のような値が格納されます。
先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で HOUR D0 D10 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。
HOURP:パルス実行形
パルス実行形の時計データの変換(秒→時分秒)命令は”HOURP”と指令します。
こちらがHOURP命令を使用したラダープログラム例です。
連続実行形(HOUR命令)との違いは、入力条件である入力リレーX0がOFF→ONになった瞬間に1回だけ時計データの変換を実行することです。(すぐに変換先のデータレジスタの値が0に戻る訳ではありません。)
つまり、入力リレーX0がONし続けている状態で変換元のデバイス(↑のラダープログラムではD0・D1)の値が変わっても、変換先のD10~D12の値は追従しません。X0がOFF→ONになったときに変換した値が保持されます。
2.【例題①】秒→時・分・秒に変換した値を表示する
下記仕様のラダープログラムを時計データの変換(秒→時分秒)命令を用いて解説します。
先ほどのHOUR命令を使用すれば簡単に作成することが可能です。先ほどは入力条件を入力リレーX0としていましたので、常時ONするデバイスに代替します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
※使用していないデバイスがありますがご了承ください。
データレジスタD0・D1の値を秒のデータと見なし、時・分・秒に変換したデータをD10~D12に格納します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
今回は、スイッチ等の入力条件がなく「常に」時計データの変換を行うので、特殊リレーのSM400を使用します。SM400はCPUがRUN中は常にONする特殊なリレーです。
3.【例題②】変換した時・分・秒の値を比較する
下記仕様のラダープログラムを時計データの変換(秒→時分秒)命令を用いて解説します。
データレジスタD10~D12のデバイス値をD20~D22と比較して、両者がすべて等しい場合はランプ(Y0)を点灯させる。これらの処理は常に行うものとする。
【例題①】に対して「デバイス値を比較する処理」と「比較結果に応じてランプを点灯させる処理」が追加されています。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
データレジスタD0・D1の値を秒のデータと見なし、時・分・秒に変換したデータをD10~D12に格納します。(ここまでは【例題①】と同様)
時・分・秒に変換したデータのD10~D12とD20~D22のデバイス値を比較して、両者すべて等しい場合のみランプ(Y0)を点灯させます。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
【例題①】と同様に、常に時計データの変換(秒→時分秒)命令を実行します。
接点形比較命令を用いて「時分秒に変換したD10~D12」と「D20~D22」のデバイス値を比較して各々等しい場合に出力リレーY0をONさせます。
4. おわりに
三菱Qシリーズにおける時計データの変換(秒→時分秒)命令について解説しました。
以下の参考書は、シーケンス制御・ラダープログラムについて詳しく解説しているものです。
本書は私が通っていた短大のシーケンス制御の講義に教科書として使用していました。
シーケンス制御で必要なスキルはリレー回路やラダープログラムを組めることだけではなく、ソレノイドバルブやインダクションモータなどの機器を理解していなければなりません。本書では、それらの機器を実際の機構を交えて解説しています。
ラダープログラムは基礎部分から、一連動作を組むまで解説していますので中級者が読んでも意味がある内容です。