キーエンスKVシリーズにおける「セット」命令とは、入力条件がONするとデバイスがONし続けるラダープログラム命令です。
逆に「リセット」命令とは、入力条件がONするとデバイスをOFFするラダープログラム命令です。
この記事では、キーエンスKVシリーズにおけるセット命令とリセット命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
キーエンスKVシリーズでは、セット命令とリセット命令が合体したイメージのキープ(KEEP)命令という命令が存在します。キープ(KEEP)命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【キーエンスKV】キープ(KEEP)命令の指令方法とラダープログラム例目次
1. セット命令の指令方法
セット命令には2種類の命令方法があります。
SET | :毎スキャン実行型 |
@SET | :微分実行型(パルス実行型) |
SETは、その名の通り 置く・配置する(set)からきています。
SET:毎スキャン実行型のセット命令
毎スキャン実行型のセット命令は”SET”と指令します。
↓がSET命令を使用したラダープログラム例です。
↓命令部分を拡大
<↑のラダープログラム動作>
実行条件である入力リレーR000がONすると、出力リレーR500がONします。その後にR000がOFFしてもR500はONし続けます。
R500をOFFさせるには、次項で解説するリセット命令等を用いて新たに”0”を書き込む必要があります。
@SET:微分実行型(パルス実行型)のセット命令
命令の頭文字に@を付けることで、微分実行型(パルス実行型)となります。微分実行型(パルス実行型)は実行条件がOFF→ONになった瞬間の1スキャンしか実行されません。
↓が@SET命令を使用したラダープログラム例です。
↓命令部分を拡大
<↑のラダープログラム動作>
毎スキャン実行型と同様、実行条件である入力リレーR000がONすると、出力リレーR500がONします。その後にR000がOFFしてもR500はONし続けます。
ただし、微分実行型(パルス実行型)である@SET命令は実行条件がOFF→ONになった瞬間の1スキャンのみ実行されます。
KV STUDIOにおける命令挿入の方法
セット命令をKV STUDIOの回路上に挿入するには「SET ONするデバイス」と回路上で入力します。
例)先ほどの毎スキャン実行型のセット(SET)命令を挿入する場合、KV STUDIOの回路上でSET R500と入力してEnterキーを押します。
2. リセット命令の指令方法
リセット命令には2種類の命令方法があります。
RES | :毎スキャン実行型 |
@RES | :微分実行型(パルス実行型) |
RESは、リセット(reset)の略です。
RES:毎スキャン実行型のセット命令
毎スキャン実行型のリセット命令は”RES”と指令します。
↓がRES命令を使用したラダープログラム例です。
↓命令部分を拡大
<↑のラダープログラム動作>
実行条件である入力リレーR000がONすると、出力リレーR500がOFFします。
@RES:微分実行型(パルス実行型)のセット命令
命令の頭文字に@を付けることで、微分実行型(パルス実行型)となります。微分実行型(パルス実行型)は実行条件がOFF→ONになった瞬間の1スキャンしか実行されません。
↓が@RES命令を使用したラダープログラム例です。
↓命令部分を拡大
<↑のラダープログラム動作>
毎スキャン実行型と同様、実行条件である入力リレーR000がONすると、出力リレーR500がOFFします。
ただし、微分実行型(パルス実行型)である@RES命令は実行条件がOFF→ONになった瞬間の1スキャンのみ実行されます。
KV STUDIOにおける命令挿入の方法
セット命令をKV STUDIOの回路上に挿入するには「RES OFFするデバイス」と回路上で入力します。
例)先ほどの毎スキャン実行型のリセット(RES)命令を挿入する場合、KV STUDIOの回路上でRES R500と入力してEnterキーを押します。
3.【例題①】ONする条件が論理積(AND)のセット・リセット
下記仕様のラダープログラムをセット・リセット命令を用いて解説します。
スイッチ(R002)を押すことでランプ(R500)は消灯する。
※スイッチが同時に押された場合、消灯する条件を優先してランプ(R500)は点灯しないこととする。
この仕様のラダープログラムは自己保持回路やキープ命令など色々な作成方法がありますが、今回はセット・リセット命令を用いて解説します。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーR000かつR001がONすると、出力リレーR500がONし続けます。R000・R001のどちらか一方だけONではR500はONしません。
入力リレーR002がONすると、出力リレーR500はOFFします。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(R000)かつスイッチ(R001)を押すと、ランプ(R500)が点灯し続けます。その後、スイッチ(R002)を押すことでランプ(R500)は消灯します。
スイッチが同時に押された場合、スイッチ(R002)を優先してランプ(R500)は点灯しません。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
実行条件を入力リレーR000とR001のa接点を直列に接続したセット(SET)命令を使用して、出力リレーR500をONさせます。直列に接続することで『R000かつR001がONするとR500がONする』動作になります。
R500をOFFさせるため、R002を実行条件とするリセット(RES)命令を使用します。
毎スキャン実行型のセット・リセット命令を使用した場合、ラダープログラムの後(下側)に記述した命令が優先的に実行されます。
シミュレータの動作
シミュレータを実行している様子は以下のようになります。
各デバイスは、黄緑色に塗りつぶされるとONになっている状態です。
入力リレーR000かつR001がONすると、出力リレーR500がONします。その後R000・R001がOFFしてもR500はONし続けます。
入力リレーR002がONするとR500はOFFします。SET条件とRES条件が同時にONすると、R500はONしません。
4.【例題②】OFFする条件が論理和(OR)のセット・リセット
下記仕様のラダープログラムをセット・リセット命令を用いて解説します。
スイッチ(R001)またはスイッチ(R002)を押すことでランプ(R500)は消灯する。
※スイッチが同時に押された場合、消灯する条件を優先してランプ(R500)は点灯しないこととする。
【例題①】では、SET条件がR000かつR001の論理積(AND)でした。今回はRES条件を「R001またはR002」としています。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーR000がONすると、出力リレーR500がONし続けます。
入力リレーR001またはR002がONすると、出力リレーR500はOFFします。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(R000)を押すと、ランプ(R500)が点灯し続けます。その後、スイッチ(R001)またはスイッチ(R002)を押すことでランプ(R500)は消灯します。
スイッチが同時に押された場合、スイッチ(R001)とスイッチ(R002)を優先してランプ(R500)は点灯しません。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
リセット(RES)命令にR001とR002を並列に接続することで『R001またはR002がONすることで出力リレーR500がOFFする』動作になります。
シミュレータの動作
シミュレータを実行している様子は以下のようになります。
入力リレーR000がONすると出力リレーR500がONします。R001またはR002がONするとR500はOFFします。
5. おわりに
キーエンスKVシリーズにおけるセット・リセット(SET・RES)命令について解説しました。
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
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「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。
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Greetings from Indonesia