キーエンスKVシリーズにおける「排他的論理和演算」命令とは、内部レジスタの値と指定した値の排他的論理和を再度内部レジスタに格納ラダープログラム命令です。
排他的論理和とは、入力条件のどちらか片方だけがONの場合に出力がONする論理演算です。言い換えると、2ヶの入力条件の状態が不一致の場合に出力条件がONする論理演算です。(入力条件が2ヶの場合)
この記事では、キーエンスKVシリーズにおける排他的論理和演算命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
キーエンスKVシリーズにおける論理和演算(ORA)命令・論理積(ANDA)命令については以下のページで解説しております。
【キーエンスKV】論理和演算(ORA)命令の指令方法とラダープログラム例 【キーエンスKV】論理積演算(ANDA)命令の指令方法とラダープログラム例目次
1. 排他的論理和演算命令の指令方法
排他的論理和演算命令は、『毎スキャン実行型』と『微分実行型(パルス実行型)』に大別されます。
毎スキャン実行型とは、実行条件がONしている間、その命令を毎スキャン実行するものです。対して微分実行形(パルス実行型)とは、実行条件がOFF→ONになったときの1スキャンのみ実行するものです。
EORA:毎スキャン実行型の排他的論理和演算命令
毎スキャン実行型の排他的論理和演算命令は、扱うデバイスのデータ型によって、さらに2種類に分けられます。
以下が毎スキャン実行型の排他的論理和演算命令です。
EORA(.U) | :16ビット符号無しBINデータ |
EORA.D | :32ビット符号無しBINデータ |
扱う「データ長」や「符号付きor無し」などはサフィックスと呼ばれる接尾語を命令文につけて指定します。※排他的論理和演算命令の命令文はEORAです。
KV STUDIOで作成した各々の毎スキャン実行型の排他的論理和演算命令は以下のようになります。
↓が16ビット符号無しBINデータの排他的論理和演算(EORA)命令です。
↓命令部分を拡大
このラダープログラムは、実行条件である入力リレーR000がONしている間、データメモリDM0とDM1の排他的論理和演算の結果をデータメモリDM2に格納します。
例えば、DM0とDM1のデバイス値が下記の状態でR000がONした場合、DM2には以下のような排他的論理和演算の結果が格納されます。
DM0とDM1のどちらか片方のみ”1”の場合、DM2のビットが”1”になります。
↑の例の場合、DM0とDM1のビット「0」「5」「6」「7」「8」「9」「A」「B」「D」「E」が、どちらか片方のみ”1”になっているため、排他的論理和演算の結果が格納されるDM2には”1”が格納されます。
排他的論理和演算命令について理解するためには、両側のLDA命令とSTA命令の意味を理解して頂く必要があります。少し長くなりますが、まだ理解していない方は以下の解説をご覧ください。
そもそも排他的論理和演算命令とは、内部レジスタと指定した値の排他的論理和の演算結果を再度内部レジスタ に格納する命令です。
排他的論理和演算する一方のデバイスは、一度内部レジスタに値を格納する必要があります。この内部レジスタにデータを格納する命令がロードA(LDA)命令です。↑のラダープログラムではデータメモリDM0の値を内部レジスタに格納しています。
指定した値とは、排他的論理和演算するもう一方の内部レジスタのことで、↑のラダープログラムではDM1を指定しています。
排他的論理和演算の結果は再度内部レジスタに格納されるので、内部レジスタ上からデータメモリ等のデバイスに値を引っ張ってくる必要があります。この内部レジスタのデータを指定したデバイスに格納する命令がストアA(STA)命令です。↑のラダープログラムでは内部レジスタの値をデータメモリDM2に格納しています。
↓が32ビット符号無しBINデータの排他的論理和演算(EORA.D)命令です。
このラダープログラムは、実行条件である入力リレーR000がONしている間、データメモリDM0,DM1とDM2,DM3の排他的論理和演算の結果を32ビットの内部レジスタに格納します。
STA.D命令を用いて32ビット内部レジスタの値を”32ビット符号無しBINデータ”としてDM4,DM5に格納します。
@EORA:微分実行型(パルス実行型)の排他的論理和演算命令
微分実行型(パルス実行型)の排他的論理和演算命令は、毎スキャン実行型と同様にサフィックスによって、さらに2種類に分けられます。
@EORA(.U) | :16ビット符号無しBINデータ |
@EORA.D | :32ビット符号無しBINデータ |
命令の頭文字に@を付けることで、実行条件がOFF→ONになったときの1スキャンしか実行されない微分実行型(パルス実行型)となります。
KV STUDIOで作成した各々の微分実行型(パルス実行型)の排他的論理和演算命令は以下のようになります。
↓が微分実行型(パルス実行型)の16ビット符号無しBINデータの排他的論理和演算(@EORA)命令です。
微分実行型(パルス実行型)の場合、命令文の左側に上向きの矢印が表示されます。
このラダープログラムは、実行条件である入力リレーR000がOFF→ONになった瞬間に、データメモリDM0とDM1の排他的論理和演算の結果をデータメモリDM2に格納します。
このように、微分実行型(パルス実行型)の場合は実行条件がOFF→ONになった瞬間の1スキャンしか命令が実行されません。
扱うデバイスのデータ型によるサフィックスの指定方法に関しては、毎スキャン実行型と同様です。
その他の微分実行型(パルス実行型)の排他的論理和演算命令は以下のようになります。
命令の解説は省略しますが、実行条件がOFF→ONになった瞬間に1スキャンだけ実行されるもので、その他は毎スキャン実行型と同じ機能と捉えて頂いて問題ありません。
↓が微分実行型(パルス実行型)の32ビット符号無しBINデータの排他的論理和演算(@EORA.D)命令です。
KV STUDIOにおける命令挿入の方法
排他的論理和演算命令をKV STUDIOの回路上に挿入するには「命令文 排他的論理和演算の対象」と回路上で入力します。
例1)先ほどの毎スキャン実行型の16ビット符号無しBINデータの排他的論理和演算(EORA)命令を挿入する場合、KV STUDIOの回路上でEORA DM1と入力してEnterキーを押します。
※ついでにロードA(LDA)命令とストアA(STA)命令も挿入しています。
例2)先ほどの微分実行型(パルス実行型)の32ビット符号無しBINデータの排他的論理和演算(@EORA.D)命令を挿入する場合、KV STUDIOの回路上で@EORA.D DM2と入力してEnterキーを押します。
※こちらもロードA(LDA)命令とストアA(STA)命令も挿入しています。
2.【例題①】常に排他的論理和の演算を行う
下記仕様のラダープログラムを排他的論理和演算命令を用いて解説します。
この処理をPLCがRUNモード中、常に実行する。
PLCがRUNモード中、常に排他的論理和演算命令を実行します。今回は実行条件にコントロールリレーCR2002を使用します。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。
データメモリDM0とDM1の排他的論理和演算を常にDM2に格納し続けます。
タッチパネル右上でDM0とDM1に数値を入力します。(16進数入力)
タッチパネル右下には、DM0~DM2の各ビット情報を表示しています。各ビットは四角が塗りつぶされるとONしている状態です。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
実行条件をCR2002とする排他的論理和演算(EORA)命令を用いて、DM0とDM1の排他的論理和演算の結果をDM2に格納します。
今回はPLCがRUNモード中は常に命令を実行するため、排他的論理和演算(EORA)命令は毎スキャン実行型を使用します。
3.【例題②】スイッチONで排他的論理和の演算を行う
下記仕様のラダープログラムを排他的論理和演算命令を用いて解説します。
スイッチ(R000)が押された状態でDM0またはDM1のデバイス値が変わっても、DM2のデバイス値は追従して変化しない。
スイッチ(R000)を押された瞬間、つまりR000がOFF→ONになった瞬間のみ排他的論理和演算命令を実行します。
【例題①】では、毎スキャン実行型の排他的論理和演算命令を使用していましたが、今回は微分実行型(パルス実行型)を使用します。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。
※【例題①】と同様、タッチパネル右上でDM0とDM1の数値を入力します。
スイッチ(R000)を押した瞬間、データメモリDM0とDM1の排他的論理和演算の結果をDM2に格納します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
実行条件をR000とする微分実行型(パルス実行型)の排他的論理和演算(EORA)命令を用いて、DM0とDM1の排他的論理和演算の結果をDM2に格納します。
微分実行型(パルス実行型)は実行条件がOFF→ONになった瞬間の1スキャンのみ実行されます。
スイッチ(R000)が押されている状態でDM0またはDM1のデバイス値が変化しても、命令が実行されていないためDM2のデバイス値は追従して変化しません。
4. おわりに
キーエンスKVシリーズにおける排他的論理和演算(EORA)命令について解説しました。
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