オムロンCJシリーズにおける「否定転送」命令とは、CHデータまたは定数値のビット反転データを、指定したCHに転送するラダープログラム命令です。
否定転送命令を用いることにより、データメモリ(D)や拡張データメモリ(E)の各ビットのON/OFF状態を反転させたり、チャネルの各リレーのON/OFF状態をまとめて反転させることができます。
この記事では、オムロンCJシリーズにおける否定転送命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
オムロンCJシリーズにおける転送(MOV)命令については以下のページで解説しております。
【オムロンCJ】転送(MOV)命令の指令方法とラダープログラム例目次
1. 否定転送命令の指令方法
否定転送命令には、動作オプションを含めると4種類の指令方法があります。
命令文 | 内容 | 動作オプション |
---|---|---|
MVN | 1ワード長の否定転送命令 | – |
@MVN | 1ワード長の否定転送命令 | 微分 |
MVNL | 2ワード長の否定倍長転送命令 | – |
@MVNL | 2ワード長の否定倍長転送命令 | 微分 |
MVNは、Move notの略です。(だと思います)
MVN:1ワード長の転送命令(動作オプション無し)
1ワード長の否定転送命令(動作オプション無し)は”MVN”と指令します。
こちらがMVN命令を使用したラダープログラム例です。
このラダープログラムは、0.00がONすると16進数”AAAA”の反転である”5555”がデータメモリD0に転送され、0.01がONすると16進数”FFFF”の反転である”0000”がD0に転送されます。
↓は16進数”AAAA”を否定転送したときのデータメモリD0の内容です。
↓は16進数”FFFF”を否定転送したときのデータメモリD0の内容です。
否定転送命令の入力条件が同時にONした場合「ラダープログラム下側に指令した命令が優先」されます。
先ほどのラダープログラムはCX-Programmerの回路上で MVN #AAAA D0 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。 ※スマートインプットモードの場合
@MVN:1ワード長の否定転送命令(微分オプション)
1ワード長の否定転送命令(微分オプション)は”@MVN”と指令します。
こちらが@MVN命令を使用したラダープログラム例です。
微分オプションの否定転送(@MVN)命令は「入力条件の立ち上がり(OFF→ON)時に1サイクルのみ命令が実行される」ことです。
↑のラダープログラムの場合、0.00と0.01が双方ONした場合、後にONした方が優先されます。
MVNL・@MOVL:2ワード長の否定倍長転送命令
2ワード長の否定倍長転送命令(動作オプション無し)は”MVNL”と指令します。
2ワード長の否定倍長転送命令(微分オプション)は”@MVNL”と指令します。
こちらがMVNL・@MVNL命令のラダープログラム例です。
2ワード長の否定倍長転送命令の場合、各CHは指定したCHを下位とする2ワードとして扱われます。
2.【例題①】1ワード長の否定転送を求める
下記仕様のラダープログラムを否定転送命令を用いて解説します。
各データメモリは1ワード長として扱うため、1ワード長の否定転送命令を使用します。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(0.00)を押している間、データメモリD0のビット反転データをD1に転送します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
0.00を入力条件とする1ワード長の否定転送命令(オプション無し)のMVN命令を使用して、D0のビット反転データをD1に転送します。
スイッチ(0.00)が押されている間にデータメモリD0のデバイス値が変化すると、D1のデバイス値も追従して変化します。
3.【例題②】2ワード長の否定転送を求める
下記仕様のラダープログラムを否定倍長転送命令を用いて解説します。
データメモリはD0,D2を下位とする2ワード(32ビット)長として扱う。
データメモリを2ワード長として扱うため、2ワード長の否定倍長転送命令を使用します。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(0.00)を押している間、データメモリD0,D1のビット反転データをD2,D3に転送します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
0.00を入力条件とする2ワード長の否定倍長転送命令(オプション無し)のMVNL命令を使用して、D0,D1のビット反転データをD2,D3に転送します。
4. おわりに
オムロンCJシリーズにおける否定転送命令について解説しました。
転送命令はデータメモリやCHデータを扱う際は使用頻度が高くなる命令ですので、使いこなせるようになって頂ければと思います。
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