クランプメータとは、電線を切断せずに「はさむ」だけで、通電中の電流を測定できる計測機器です。洗濯ばさみのような形状のクランプ部を開いて電線を挟み込み、その周囲に発生する磁界を検出することで、電線に流れる電流を求めます。
一般的なマルチメータ(テスター)で電流を測定する場合、回路を一度切断して測定器を直列に接続する必要があります。一方、クランプメータは回路を切断せずに測定できるため、安全かつ効率的に電流測定を行えるのが大きな特徴です。
この記事では、クランプメータを使って直流(DC)および交流(AC)の電流を測定する方法や現場で活用できる便利な機能を解説します。使用する機器は、電気計測器メーカである日置電機株式会社(HIOKI)のAC/DCクランプメータ CM4371-50です。
クランプメータによって操作方法や測定レンジが異なる場合がありますので、必ず取扱説明書も併せてご確認ください。
CM4371-50は、電流測定だけの計測機器ではありません。リードを接続することで「電圧の測定」や「抵抗値の測定」「導通チェック」なども行えるため、現場での「とりあえずこれ1台」の需要に応えられる万能な計測機器です。
特に保全作業やトラブルシューティングの場面では、電流値と同時に電源有無や回路断線の確認まで一連で実施できるため、持ち替えや計測器の切り替えを最小限にすることが可能です。
目次
1. CM4371-50の特長(仕様の紹介)
CM4371-50は、電路を挟み込むだけで電流の真の実効値(True RMS)を測定できるクランプメータです。近年の工場や制御盤では、インバータやスイッチング電源など高調波を含む非正弦波の電流が流れるケースが増えており、真の実効値(True RMS)により歪んだ波形でもより正確な測定が期待できます。
CM4371-50は電流の他にも、電圧、周波数、突入電流、抵抗、ダイオードテスト、静電容量、温度、および直流電力の測定が可能です。

| 測定可能導体径 | φ33mm |
| 整流方法 | 真の実効値 |
| 周波数特性 | 10Hz~1kHz |
| 交流電流 (最小分解能) 確度規定範囲 | 600.0A (0.01) 1A~600A |
| 直流電流 (最小分解能) | 600A (0.01) |
| 交流電圧 | 1000V |
| 直流電圧 | 2000V ※1) |
| 電力 | 1200kVA(直流) ※1) |
| 抵抗 | 6MΩ |
| 温度 | -40℃~400℃ ※2) |
| 静電容量 | 可 |
| 周波数 | 999.9Hz |
| 突入電流 | 可 |
| 導通チェック | 可 |
| ダイオードテスト | 可 |
| 検電 | 可 |
※1):P2010使用時 ※2):K熱電対DT4910必要
2. 各部の名称

| 1. レバー | ジョー(クランプ部)を開閉します。 |
| 2. Fnキー | 測定機能を選択します。 |
| 3. ジョー | 電線をはさむ部分です。 |
| 4. バリア | 高電圧の危険がある部分と、使用者が手を握って操作する部分とを隔てるための安全上の境界です。 |
| 5. 製造番号 | 9桁の数字で構成され、左から2桁が製造年(西暦の下2桁)、次の2桁が製造月を表しています。 |
| 6. ロータリスイッチ | 測定機能を切り替えます。 |
| 7. HOLDキー | 測定値を固定するキーです。 |
| 8. 表示部 | 測定結果等を表示します。 |
| 9. 電池カバー | 単4形アルカリ乾電池×2用のカバーです。 |
| 10. 操作キー | バックライトON/OFFキー、MAX/MIN/PEAKキー、レンジキーがあります。 |
| 11. 測定端子部 | テストリード、K熱電対等の接続ケーブル類を接続します。 |
| 12. ストラップ取付穴 | 落下防止ストラップを取り付ける等に使用します。 |
3. 測定前の準備と安全確認
安全かつ正確に測定を行うため、以下の点を確認する必要があります。
3-1. 安全上の注意
本器を安全にご使用いただくため、取扱説明書をよくお読みください。
- 測定中はバリア(障壁)より先を触らない:使用中に触れると感電するおそれがあります。
- ジョーの取り扱い:ジョーの突き合わせ面に異物を挟んだり、傷を付けたり、指で触れたり、隙間に異物を差し込んだりしないでください。これらは測定確度や開閉動作に悪影響を及ぼすおそれがあります。
- ケーブルの確認:ケーブル内部の白色部分(絶縁層)や導体部分が露出していないか確認してください。
- 点検:測定前に、本器に破損や亀裂がないか、電池カバーが締まっているかなどを点検してください。
3-2. 測定の鉄則:1線だけをクランプする
電流測定を行う際は、導体の1線だけを本器にクランプしてください。2本以上を同時にクランプすると、それぞれの電流が磁界として相殺され、結果的に0A付近として検出されてしまいます。
直流・交流、または単相・三相に関わらず2線以上を一括してクランプした場合、正確な電流は測定できません。
4. 電流測定の基本手順
今回は私が自作したデバッグスタンドを使用して、漏電遮断器の2次側(AC100V)、スイッチング電源の直流側(DC24V)の電流値を測定します。


CM4371-50で電流を測定する手順は以下の通りです。
ロータリースイッチを回し、目的の測定モード(電流測定)を選択します。

クランプメータを測定対象から外した状態で、Fnキーを1秒間押します。

ゼロアジャストが完了すると、表示部の電流表示が0.00Aになります。

Fnキーを押して測定モードを選択します。
CM4371-50の電流測定機能には、AUTO AC/DC、交流電流(AC A)、直流電流(DC A)、および交流+直流電流(AC+DC A)に対応しており、今回は自動で交流/直流を検出するAUTO AC/DCを選択します。
AUTO AC/DC以外が表示されている場合、Fnキーを押してモードを切り替えます。

ジョーに明記された電流方向マークと電流の向きを合わせた状態で、測定対象をジョーでクランプします。


漏電遮断器の2次側(AC100V)をクランプします。※測定のため、漏電遮断器の端子カバーを外してあります。

漏電遮断器の2次側(AC100V)の測定結果はAC 0.29Aでした。
スイッチング電源の直流側(DC24V)をクランプします。


スイッチング電源の直流側(DC24V)の測定結果はDC 0.61Aでした。
5. 測定をサポートする便利な機能
CM4371-50には、現場での測定を効率化するための便利な機能が多数搭載されています。
5-1. フィルター機能によるノイズの軽減
ノイズを含んだ測定値に対して、フィルター機能を使用してノイズの影響を軽減できます。
フィルター機能はレンジキーを1秒間押し続けます。再度1秒間押すとフィルター機能がOFFになります。

5-2. データホールド機能
測定値を固定するための「手動ホールド(MANUAL HOLD)」と、測定値が安定した際に自動でホールドする「自動ホールド(AUTO HOLD)」があります。自動ホールドは、測定値の変動幅が規定内に安定し、かつ測定値がしきい値を超えた場合に表示値の更新を停止します。
手動ホールド(MANUAL HOLD)は測定モードを選択した状態で、HOLDキーを押します。再度押すと手動ホールドがOFFになります。

自動ホールド(AUTO HOLD)は測定モードを選択した状態で、HOLDキーを1秒間押します。再度1秒間押すと自動ホールドがOFFになります。
5-3. 最大値/最小値/平均値/ピーク値の測定
測定中の最大値(MAX)、最小値(MIN)、平均値(AVG)、および波高値の最大値(PEAK MAX)、最小値(PEAK MIN)を表示できます。
測定モードを選択した状態で、MAX/MIN/PEAKキーを押します。1秒間押すとOFFになります。

6. おわりに
日置電機製のクランプメータCM4371-50を使って直流(DC)および交流(AC)の電流を測定する方法を解説しました。
今回紹介したCM4371-50は、私が現場で日常的に使用しているモデルであり、精度・操作性・耐久性のいずれも高く「自信をもっておすすめできる」1台です。
特に電気保全や設備メンテナンスの現場では、「電流測定」から「電圧の測定」「導通チェック」など、1台で完結できる点が大きな魅力です。クランプメータの導入を検討している方は、ぜひ一度CM4371-50を手に取ってみて頂ければと思います。
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