「一括リセット」命令とは、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける指定した2つのデバイス間を一括でリセットするラダープログラム命令です。
リセットする対象のデバイスは「出力リレーや補助リレーのビットデバイス」「データレジスタや拡張レジスタのワードデバイス」のどちらも使用可能です。
また、タイマやカウンタの現在値をリセットすることも可能です。
一括リセット命令を用いることにより、一括でリセットしたいデバイスを1つの命令にまとめることが可能になります。※ただしデバイス番号は連続したアドレスである必要があります。
この記事では、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける一括リセット命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおいて、一括リセット命令は以下のシーケンサ・バージョンで使用することが可能です。
FX3S | :Ver1.00以降 |
FX3G | :Ver1.00以降 |
FX3GC | :Ver1.40以降 |
FX3U | :Ver2.20以降 |
FX3UC | :Ver1.00以降 |
目次
1. 一括リセット命令の指令方法
一括リセット命令には、2種類の指令方法があります。
ZRST | :連続実行形 |
ZRSTP | :パルス実行形 |
ZRSTは、Zone resetの略です。
パルス実行形は、入力条件がONしたときの1スキャンのみ実行される命令です。
ZRST:連続実行形(基本の形)
連続実行形の一括リセット命令は”ZRST”と指令します。
こちらがZRST命令を使用したラダープログラム例です。
このラダープログラムは、入力条件であるX0がONすると、出力リレーY0~Y3(計4点)をリセットします。(0にします)
出力リレーY0~Y7がONしている状態で入力リレーX0をONすると、デバイスの状態は以下のようになります。
ZRST命令で指定した範囲(Y0~Y3)のデバイスがリセットされました。
先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で ZRST Y0 Y3 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。(小文字でもOKです。)
ZRSTP:パルス実行形
パルス実行形の一括リセット命令は”ZRSTP”と指令します。
こちらがZRSTP命令を使用したラダープログラム例です。
連続実行形(ZRST命令)との違いは、入力条件であるX0がONしている状態で新たにY0~Y3のいずれかがONしても、リセットする処理は行われないことです。
2.【例題①】ビットデバイスを一括リセット
下記仕様のラダープログラムを一括リセット命令を用いて解説します。
スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y1)が点灯し続ける。
スイッチ(X2)を押すと、ランプ(Y2)が点灯し続ける。
スイッチ(X3)を押すと、ランプ(Y3)が点灯し続ける。
スイッチ(X7)を押すと、ランプ(Y0)~(Y3)はすべて消灯する。
※同時にスイッチが押された場合、消灯する条件を優先する。
色々な手法で実現できますが、今回はSET命令とZRST命令を用いて作成します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
各スイッチを押すと対応したランプが点灯し続けます。スイッチ(X7)を押すとランプはすべて消灯します。
スイッチが同時に押された場合、スイッチ(X7)が優先されランプは消灯します。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーX0~X3がONすると、出力リレーY0~Y3がONし続けます。X7がONするとY0~Y3はすべてOFFします。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
SET命令を用いることより、入力条件がOFFしても出力リレーは保持し続けます。
ZRST命令のリセット範囲をY0~Y3に指定することで、入力条件であるX7がONするとY0~Y3が一括でリセットされます。
上のラダープログラムをZRST命令からRST命令に置き換えると、以下のラダープログラムになります。
動作は同じですが、ZRST命令を使用することでラダープログラムを短縮することができます。
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるSET・RST命令については以下のページで解説していますので、宜しければご覧ください。
【三菱FXシリーズ】セット(SET)・リセット(RST)命令の指令方法とラダープログラム例3.【例題②】ワードデバイスを一括リセット
下記仕様のラダープログラムを一括リセット命令を用いて解説します。
【例題①】では出力リレーを一括リセットの対象としていましたが、今回はデータレジスタを対象とします。
データレジスタについては以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【三菱FXシリーズ】データレジスタ(D)の機能と動作例 【三菱FXシリーズ】データレジスタ(D)の使い方GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
データレジスタD0~D5はGOTから数値を入力することができます。スイッチ(X7)を押すことで、データレジスタD0~D4のデバイス値をすべてリセットします。
リセットの範囲外であるD5の値はリセットされません。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
【例題①】と同様にZRST命令を使用していますが、今回は一括リセットの範囲をD0~D4としています。
このように、一括リセット命令はビットデバイス(Y・M等)、ワードデバイス(D・R等)のどちらにも使用することができます。
4. おわりに
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける一括リセット命令について解説しました。
ZRST命令はラダープログラムを短縮することができる大変便利な命令ですが、ラダープログラムを間違えるとリセットしてはならないデバイスまでリセットしてしまう可能性があります。使用する場合は、リセットして問題ない範囲を指定してください。
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