【キーエンスKV】オルタネート(ALT)命令の指令方法とラダープログラム例

00_【キーエンスKV】オルタネート(ALT)命令の指令方法とラダープログラム例

キーエンスKVシリーズにおける「オルタネート」命令とは、指定したビットデバイスのON/OFFを反転する(切り替える)ラダープログラム命令です。

オルタネート命令を用いることにより「入力条件がONするたびに出力が切り替わるオルタネート回路」や「一定周期でランプが点滅するフリッカ回路」を簡単に作ることができます。

この記事では、キーエンスKVシリーズにおけるオルタネート命令の指令方法ラダープログラム例について解説します。

注意
この記事中のラダープログラムはKV STUDIO Ver.11で作成しており、対応機種はKV-N24に設定してあります。
メモ
オルタネート命令はKV-8000・KV-7500/7300・KV-5500/5000/3000・KV-1000・KV-nanoシリーズで使用可能です。※2020年10月現在

1. オルタネート命令の指令方法

オルタネート命令には、1種類の指令方法があります。

ALT:オルタネート命令

ALTは、交互(Alternate)の略です。

メモ
オルタネート命令に微分実行型はありません。また、扱うデータの型を指定する「サフィックス」に対応した命令ではありません。

ALT:オルタネート命令

オルタネート命令は”ALT”と指令します。

こちらがALT命令を使用したラダープログラム例です。

10_ALT命令

このラダープログラムは、入力条件である入力リレーR000がONするたびに、出力リレーR500のON/OFFが切り替わります。

タイムチャートは以下のようになります。

10_タイムチャート

入力リレーR000がONするたびに出力リレーR500のON/OFFが切り替わります。

この時、入力条件がONしている時間は関係ありません。入力条件がOFF→ONになった瞬間に出力条件のON/OFFが切り替わります。

メモ
出力のON/OFFが切り替わるタイミングは「入力条件がOFF→ONになった瞬間」です。入力条件をパルス化する必要はありません。

KV STUDIOにおける命令挿入の方法

オルタネート命令をKV STUDIOの回路上に挿入するには「ALT ON/OFFするビットデバイス」と回路上で入力します。

例) 先ほどのラダープログラムを挿入する場合、KV STUDIOの回路上でALT R500と入力してEnterキーを押します。

10_命令挿入

2.【例題①】立ち下がりパルスのオルタネート回路

下記仕様のラダープログラムをオルタネート命令を用いて解説します。

仕様
スイッチ(R000)を押して離した瞬間、ランプ(R500)の点灯/消灯が切り替わる。

押して離した瞬間、つまりOFFになった瞬間は「立ち下がりパルス」や「ディフダウン」と表現することがあります。

キーエンスKVシリーズにおける立ち下がり命令は”DIFD”と指令します。立ち下がり命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_【キーエンスKV】立ち下がり(DIFD)命令の指令方法とラダープログラム例 【キーエンスKV】立ち下がり(DIFD)命令の指令方法とラダープログラム例

タッチパネルの動作イメージ

タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

例題①_タッチパネル

スイッチ(R000)を押して離した瞬間、ランプ(R500)の点灯/消灯が切り替わります。

タイムチャート

タイムチャートは以下のようになります。

例題①_タイムチャート

入力リレーR000がON→OFFになった瞬間に、出力リレーR500のON/OFFが切り替わります。

※入力リレーR000がONしている時間は関係ありません。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題①_ラダープログラム

入力リレーR000を入力条件とする立ち下がり(DIFD)命令を用いることにより、入力リレーR000がON→OFFになった瞬間に内部補助リレーR1000が1スキャンのみONします。

言い換えると、内部補助リレーR1000は入力リレーR000がOFFになった瞬間に1スキャンだけONします。

内部補助リレーR1000を入力条件とするオルタネート(ALT)命令を用いることにより、R1000がONするたび出力リレーR500のON/OFFが切り替わります。

まとめると「入力リレーがOFFになった瞬間にR1000が1スキャンだけONする」→「R1000がONするたびに出力リレーR500のON/OFFが切り替わる」という流れになります。

シミュレータの動作

シミュレータを実行している様子は以下のようになります。

例題①_シミュレータ

各デバイスは、黄緑色に塗りつぶされるとONになっている状態です。

入力リレーR000がON→OFFになった瞬間に、出力リレーR500のON/OFFが切り替わります。

内部補助リレーR1000は1スキャンのみONしていますが、速すぎてシミュレータでは確認することができませんが確実にONしています。

3.【例題②】フリッカー回路

下記仕様のラダープログラムをオルタネート命令を用いて解説します。

仕様
スイッチ(R000)を押している間、ランプ(R500)が2秒サイクルでON/OFFを繰り返す。(ON:1秒、OFF:1秒)

よくあるフリッカー回路ですが、今回はタイマとオルタネート命令を用いて作成します。

タッチパネルの動作イメージ

タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

例題②_タッチパネル

スイッチ(R000)を押している間、ランプ(R500)が2秒サイクルでON/OFFを繰り返します。(ON:1秒、OFF:1秒)

タイムチャート

タイムチャートは以下のようになります。

例題②_タイムチャート

入力リレーR000がONしている間、出力リレーR500が2秒サイクルでON/OFFを繰り返します。

今回はオルタネート命令の特性上「出力リレーR500がONしているときに入力リレーR000がOFFすると出力リレーはそのままONし続ける」ものとします。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題②_ラダープログラム

入力リレーR000を入力条件とするタイマT0を用意します。このT0のb接点でタイマ自身をOFFすることにより、T0のa接点は1秒サイクルで1スキャンのみONします。

↑のラダープログラムでは、タイマT0にはTMR命令を使用しています。TMR命令に定数#10を指定すると1秒後にタイマがONする命令になります。

シミュレータの動作

シミュレータを実行している様子は以下のようになります。

例題②_シミュレータ

各デバイスは、黄緑色に塗りつぶされるとONになっている状態です。

タイマT0が赤字(#10)が設定時間で、黒字が現在のカウント時間です。カウント時間が”0”になるとタイマT0はONします。

タイマT0は1秒おきに1スキャンだけONするので、出力リレーは1秒間隔でON/OFFが切り替わります。

注意
このラダープログラムは、出力リレーR500がONしているときに入力リレーR000がOFFすると、出力リレーはそのままONし続けます。入力条件がOFFしている時に出力条件もOFFしたい場合には使用することができません。

4. おわりに

キーエンスKVシリーズにおけるオルタネート命令について解説しました。

以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。

ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。

各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。

ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。

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「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。

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