NAND回路とは、入力条件がすべてONしたときのみ出力条件がOFFする回路です。言い換えると、入力条件のいずれか1ヶでもOFFだと出力条件がONする回路です。
AND回路を反転した回路(NOT AND)であることからNAND回路、もしくは否定論理積回路と呼ばれています。
この記事では、キーエンスKVシリーズで作成するNAND(否定論理積)回路のラダープログラム例を2ヶ解説します。
リレー回路で作成するNAND(否定論理積)回路については以下のページで解説しております。
【リレー回路】NAND回路の回路図と動作三菱電機製シーケンサFXシリーズで作成するNAND(否定論理積)回路のラダープログラムについては以下のページで解説しております。
【ラダープログラム回路】NAND(否定論理積)回路のラダープログラム例【三菱FX】目次
1.【例題①】入力条件が2ヶのNAND回路
下記仕様のラダープログラムを解説します。
スイッチが片方でも放されるとランプは点灯する。
スイッチは押すとON、ランプはONすると点灯するものとする。
2ヶのスイッチを両方押したときのみランプが消灯します。スイッチが片方でも放されているとランプは点灯します。
真理値表
真理値表は以下のようになります。
この真理値表では「”1”がON」「”0”がOFF」を表しています。
入力条件R0とR1のAND(論理積)がR1000になります。
今回求めるNAND(否定論理積)はAND(論理積)を反転したものです。つまり真理値表でR1000の0と1の状態を反転した結果であるR500がNAND(否定論理積)となります。
R0とR1のNAND(否定論理積)であるR500は、入力条件がどちらも”1”の場合のみ”0”となります。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
R1000がR0とR1のAND(論理積)、R500がNAND(否定論理積)となります。
R1000を反転した結果がR500となります。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
内部補助リレーR1000の実行条件に入力リレーR0とR1を直列で接続することにより、R1000にはR0とR1のAND(論理積)の結果が格納されます。(1行目)
出力リレーR500の実行条件をR1000のb接点にすることで、R1000を反転した結果がR500に格納されます。つまりR0とR1のAND(論理積)のR1000の反転であるNAND(否定論理積)がR500に格納されます。(2行目)
2.【例題②】入力条件が3ヶのNAND回路
下記仕様のラダープログラムを解説します。
スイッチが1ヶでも放されるとランプは点灯する。
スイッチは押すとON、ランプはONすると点灯するものとする。
【例題①】では入力条件であるスイッチが2ヶでしたが今回は3ヶです。少しややこしくなりますが考え方は同じです。
真理値表
真理値表は以下のようになります。
この真理値表では「”1”がON」「”0”がOFF」を表しています。
入力条件に対する「AND(論理積)がR1000」「NAND(否定論理積)がR500」となります。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
R1000がR0・R1・R2のAND(論理積)、R500がNAND(否定論理積)となります。
R1000を反転した結果がR500となります。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
NAND(否定論理積)回路の入力条件が増えた場合、AND(論理積)回路の入力条件に直列で追加します。
3. おわりに
キーエンスKVシリーズで作成するNAND(否定論理積)回路のラダープログラム例を解説しました。
NAND(否定論理積)回路の動作は少々ややこしいかもしれませんが「AND回路の逆」と考えると簡単かもしれません。AND(論理積)回路は以下のページで解説しております。
【ラダープログラム回路】AND(論理積)回路のラダープログラム例【キーエンスKV】よく似た名前で、NOR(否定論理和)回路と呼ばれるものが存在します。NOR(否定論理和)回路は以下のページで解説しております。
【ラダープログラム回路】NOR(否定論理和)回路のラダープログラム例【キーエンスKV】以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
『doda』といった大手求人(転職)サイトには電気・制御設計の求人が数多く紹介されています。※登録は無料です。
「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。