自己保持回路とは、入力条件がONすると出力がONして、その後に入力条件がOFFしても出力がONし続ける(ONを保持する)ラダープログラムです。
出力のa接点を入力条件に並列で接続することにより「出力は自身のa接点によってONが保持される」ことが自己保持回路の名前の由来です。(詳細は後ほど解説します。)
自己保持回路を用いることにより「スイッチを1回押すと、ランプが点灯し続ける」回路を作ることができます。他にも「出力をONし続ける」場合によく使用されます。
この記事では、キーエンスKVシリーズで作成する自己保持回路のラダープログラム例を2ヶ解説します。
リレー回路で作成する自己保持回路については以下のページで解説しておりますので宜しければご覧ください。
【リレー回路】自己保持回路の回路図と動作三菱電機製シーケンサFXシリーズで作成する自己保持回路のラダープログラムについては以下のページで解説しております。
【ラダープログラム回路】自己保持回路のラダープログラム例【三菱FX】目次
1.【例題①】自己保持回路をONさせる
下記仕様のラダープログラムを解説します。
その後、スイッチ(R0)を放してもランプ(R500)は点灯し続ける。
スイッチ(R0)は押すとON、ランプ(R500)はONすると点灯するものする。
スイッチ(R0)を押すと、ランプ(R500)が点灯し続ける「R500の自己保持回路」を作成します。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーR0がONすると、出力リレーR500がONし続けます。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(R0)を押すと、入力リレーR0のa接点がONします。
入力リレーR0のa接点がONすると、出力リレーR500のコイルがONします。出力リレーR500がONするとランプ(R500)が点灯します。
同時に、出力リレーR500がONしたため出力リレーR500のa接点がONします。
その後、スイッチ(R0)を放して入力リレーR0をOFFしても出力リレーR500のa接点がONし続けるため出力リレーR500がONし続けます。
このような回路は、出力自身のa接点を用いてONし続ける(保持する)ため自己保持回路と呼ばれます。
ただし、この回路では出力リレーR500がOFFしないためランプ(R500)は消灯できません。【例題②】ではランプを消灯させる条件を追加します。
2.【例題②】自己保持回路をOFFさせる
下記仕様のラダープログラムを解説します。
その後、スイッチ(R0)を放してもランプ(R500)は点灯し続ける。
スイッチ(R1)を押すとランプ(R500)は消灯する。
スイッチ(R0)と(R1)は押すとON、ランプ(R500)はONすると点灯するものする。
【例題①】では一度点灯したランプ(R500)を消灯する手段がありませんでした。今回はスイッチ(R1)を追加してランプ(R500)を消灯できるようにします。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーR0がONすると、出力リレーR500がONし続けます。ここは【例題①】と同様です。
入力リレーR1がONすると、出力リレーR500はOFFします。
R0とR1が両方ONした場合、R1の処理を優先してR500はOFFします。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
【例題①】に対してR1のb接点を追加しています。R1はb接点のためスイッチを「押すとOFF」「放すとON」します。
スイッチ(R0)を押すと、出力リレーR500が自己保持してランプ(R500)が点灯し続けます。この時スイッチ(R1)は放した状態です。
スイッチ(R1)を押すと、入力リレーR1のb接点がOFFするため出力リレーR500がOFFしてランプ(R500)は消灯します。この時、入力リレーR0がONしても出力リレーR500がONしません。
ラダープログラムで使用される自己保持回路の大半は、OFFする条件が必要となります。【例題②】で解説した自己保持回路が一般的なものとなります。
3. おわりに
キーエンスKVシリーズで作成する自己保持回路のラダープログラム例を解説しました。
自己保持回路の基本は【例題②】で解説した形になりますが、自己保持回路は色々なバリエーションが存在しますので、別記事で解説したいと思います。
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
『doda』といった大手求人(転職)サイトには電気・制御設計の求人が数多く紹介されています。※登録は無料です。
「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。