「後入力優先回路」とは、後に入力された処理を優先して、先に入力されていた処理を無効にする回路です。別名、後行優先回路・後優先回路・新入力優先回路・インタロック回路とも呼ばれています。
後入力優先回路の例として「テレビのリモコン」があります。リモコンのチャンネルボタンを押すことで、テレビはそのチャンネルに切り替わります。テレビには最後に押されたチャンネルが表示されます。
PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を用いる産業機械や工場設備でも、後入力優先回路は色々な部分で使用されます。
この記事では、三菱電機製シーケンサFXシリーズで作成する後入力優先回路のラダープログラム例を3ヶ解説します。
インタロック回路 = 後入力優先回路というわけではありません。
キーエンスKVシリーズで作成する後入力優先回路のラダープログラムについては以下のページで解説しております。
【ノウハウ初級】後入力優先回路のラダープログラム例【キーエンスKV】目次
1.【例題①】後入力優先回路 入力条件2ヶ
下記仕様のラダープログラムを解説します。
スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y1)が点灯し続ける。(自己保持)
スイッチ(X2)を押すと、各ランプは消灯する。
ランプは後に点灯した方を優先して、同時に点灯してはならない。
スイッチ(X0)と(X1)のうち、後に入力された処理を優先する後入力優先回路を作成します。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーX0がONすると出力リレーY0がONし続け、入力リレーX1がONすると出力リレーY1がONし続けます。
入力リレーX0とX1は後に入力された処理が優先されるため、出力リレーY0とY1は同時にONしません。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)と(X1)は後に押された処理が優先されます。
スイッチ(X2)が押されるとランプは消灯します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
後入力優先回路を作成する場合、自己保持回路を切る条件に「互いの入力のb接点」を入れます。
今回は入力のb接点を自己保持をする出力のa接点の隣に配置しました。この回路は、スイッチ(X0)と(X1)が同時に押された場合、ランプ(Y0)と(Y1)が同時に点灯します。
スイッチが複数ある場合、スイッチの同時押しを考慮しなければならないケースは多々あります。スイッチが同時に押されたときにランプが複数点灯しないラダープログラムは【例題②】で解説します。
三菱電機製シーケンサFXシリーズで作成する自己保持回路については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【ラダープログラム回路】自己保持回路のラダープログラム例【三菱FX】2.【例題②】後入力優先回路 同時押しを考慮
下記仕様のラダープログラムを解説します。
スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y1)が点灯し続ける。(自己保持)
スイッチ(X2)を押すと、各ランプは消灯する。
ランプは後に点灯した方を優先して、同時に点灯してはならない。
スイッチが同時に複数押された場合もランプは同時に点灯してはならない。
【例題①】ではスイッチ(X0)と(X1)が同時に押された場合、ランプが両方点灯しました。今回は同時に押された場合もランプは同時に点灯しません。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーX0とX1が同時にONした場合、後にONした方の出力が優先されます。
GOTの動作イメージ
スイッチ(X0)と(X1)が同時に押された場合、後に入力された方のランプが点灯します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(X0)と(X1)のa接点を立上りパルス(PLS)命令で受けることにより、M0とM1はスイッチが押された後の1スキャンしかONしません。
立上りパルス(PLS)命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【三菱FXシリーズ】パルス(PLS・PLF)命令の指令方法とラダープログラム例3.【例題③】後入力優先回路 入力条件3ヶ
下記仕様のラダープログラムを解説します。
スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y1)が点灯し続ける。(自己保持)
スイッチ(X2)を押すと、ランプ(Y2)が点灯し続ける。(自己保持)
スイッチ(X3)を押すと、各ランプは消灯する。
ランプは後に点灯したものを優先して、同時に点灯してはならない。
スイッチが同時に複数押された場合もランプは同時に点灯してはならない。
スイッチ(X0)と(X1)と(X2)のうち、後に入力された処理を優先するラダープログラムです。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
入力リレーX0~X2がONしたとき、後にONしたものが優先されます。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチが押されると対応するランプが点灯します。新たに別のスイッチが押されると対応したランプが点灯します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
【例題②】と同様にスイッチを立上りパルス(PLS)命令で受けることで、スイッチが同時に押された場合にもランプが同時に点灯することはありません。
後入力優先回路の条件が増えた場合、各々に入力(パルス)のb接点を追加します。
4. おわりに
三菱電機製シーケンサFXシリーズで作成する後入力優先回路のラダープログラム例を解説しました。
後入力優先回路には対になる先入力優先回路と呼ばれる回路があります。先入力優先回路は以下のページで解説しております。
【ノウハウ初級】先入力優先回路のラダープログラム例【三菱FX】以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
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