ラダープログラムにおける補助リレーとは、プログラム上で使用することができる仮想のリレーのことです。PLCメーカによっては『内部リレー』や『内部補助リレー』と呼ぶことがあります。
三菱電機製のPLCであるFXシリーズでは、補助リレーは M と表記します。
補助リレー(M)は出力リレー(Y)と同様、ラダープログラム内でコイルをONさせることでa接点がON・b接点がOFFします。このa接点・b接点はラダープログラム内で自由に使用することができます。
この補助リレーはラダープログラム内の「一時的に状態を記憶」したり「複雑な条件を一つの補助リレーにまとめる」といった色々な用途で使用され、複雑なラダープログラムになれば補助リレーはラダープログラム全体で使用頻度が一番高いデバイスといっても過言ではありません。(勿論ラダープログラムの内容によりますが)
この記事では、三菱FXシリーズにおける使用できる補助リレーのデバイス番号と補助リレーの種類について解説します。
目次
1. 使用できる補助リレーのデバイス番号
三菱FXシリーズの場合、使用できる補助リレーのデバイス番号はPCタイプによって相違があり、指定する補助リレー番号によって機能が異なります。
FX3Sシーケンサ
FX3Sシーケンサで使用できる補助リレーの番号は以下のようになります。
M0~M383 | :一般用 |
M384~M511 | :停電保持専用 |
M512~M1535 | :一般用 |
M8000~M8511 | :特殊用 |
FX3G・FX3GCシーケンサ
FX3G・FX3GCシーケンサで使用できる補助リレーの番号は以下のようになります。
M0~M383 | :一般用 |
M384~M1535 | :停電保持専用 |
M1536~M7679 | :一般用 |
M8000~M8511 | :特殊用 |
M1536~M7679は、オプションのバッテリを使用した場合、パラメータによって停電保持に変更することができます。
FX3U・FX3UCシーケンサ
FX3U・FX3UCシーケンサで使用できる補助リレーの番号は以下のようになります。
M0~M499 | :一般用 |
M500~M1023 | :停電保持用 |
M1024~M7679 | :停電保持専用 |
M8000~M8511 | :特殊用 |
M0~M499は、パラメータによって停電保持領域に変更できます。
M500~M1023は、パラメータによって非停電保持領域に変更できます。
2. 補助リレーの機能と動作例
上記の表から、補助リレーは「一般用」「停電保持用」「特殊用」の3ヶに大別されます。それぞれの補助リレーの機能を解説します。
一般用
一般用の補助リレーは、シーケンサの電源をOFFにした場合、補助リレーの状態がOFFになる補助リレーです。シーケンサの電源をON/OFFしてもON状態を保持したい場合、後述する「停電保持用」を使用する必要があります。
以下のラダープログラムを用いて解説します。
このラダープログラムは『入力リレーX0をONすると出力リレーY0がONして、X1がONするとY0がOFFする』ものです。
もう少し厳密にいうと『入力リレーX0をONすると補助リレーM0がONして、X1がONするとM0がOFFする。M0がONしている間は出力リレーY0がONする』ラダープログラムです。
↑のラダープログラムは、以下と同じ動作になります。
この程度のラダープログラムでは、先ほどのラダープログラムのように補助リレーを使うメリットはあまりありません。
ラダープログラム上の「条件が複雑になる場合」や「共通条件を複数の部分に使用する場合」等は、補助リレーを用いることでプログラムの簡略化や見易さを向上が図れます。
停電保持用
停電保持用のラダープログラムは、シーケンサの電源をOFFにした場合、補助リレーの状態は電源をOFFにする直前の状態を保持します。
つまり、停電保持用の補助リレーがONしている状態でシーケンサの電源をON/OFFしても、補助リレーはONを保持します。
以下のラダープログラムを用いて解説します。(FX3Gの場合)
このラダープログラムは先ほどと同様に『入力リレーX0をONすると出力リレーY0がONして、X1がONするとY0がOFFする』ものです。
FX3G・FX3GCシーケンサの場合、補助リレーM384は停電保持用のため、M384がONした状態でシーケンサの電源をON/OFFしても、M384はON状態を保持します。
特殊用
前述した「一般用」「停電保持用」はどちらも、ラダープログラム上でONさせる必要があり、どのような用途で使用するかはラダープログラム作成者が自由に決めることができる補助リレーです。
対して「特殊用」は、機能があらかじめ決められている補助リレーです。
M8000 | :RUNモニタa接点 |
M8001 | :RUNモニタb接点 |
M8002 | :イニシャルパルスa接点 |
M8003 | :イニシャルパルスb接点 |
M8005 | :バッテリ電圧低下 |
M8013 | :1sクロック(ON:0.5秒、OFF:0.5秒) |
M8014 | :1minクロック(ON:30秒、OFF:30秒) |
これらは三菱FXシリーズで用意されている特殊用の補助リレーの一例です。
以下は特殊用の補助リレーM8013を用いたラダープログラム例です。
M8013は、ON:0.5秒とOFF:0.5秒をひたすら繰り返す特殊な補助リレーです。M8013のコイルをONさせる必要はありません。
このように、三菱FXシリーズには便利な特殊用の補助リレーが数多く用意されています。
3. おわりに
この記事では、三菱FXシリーズにおける使用できる補助リレーのデバイス番号と補助リレーの種類について解説しました。
使用するPCタイプによって使用できるデバイス番号が異なり、補助リレー番号によって機能が異なりますのでご注意ください。
- 補助リレーはラダープログラム上で使用できる仮想リレー
- 一般用はシーケンサの電源をON/OFFするとOFF状態になる
- 停電保持用はシーケンサの電源をON/OFFしても状態を保持する
- 特殊用は機能があらかじめ割り振られている便利な補助リレー
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
『doda』といった大手求人(転職)サイトには電気・制御設計の求人が数多く紹介されています。※登録は無料です。
「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。