【三菱FXシリーズ】除算(DIV)命令の指令方法とラダープログラム例

「除算命令」とは、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける2ヶの定数またはデバイス値を除算して商と剰余(余り)を求める命令です。(A÷B=C 余り D)

この記事では、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける除算命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。

注意

この記事中のラダープログラムはGX Works2で作成しており、PCタイプはFX3G/FX3GCに設定してあります。

三菱電機製シーケンサFXシリーズにおいて、除算命令は以下のシーケンサ・バージョンで使用することが可能です。

FX3S	：Ver1.00以降
FX3G	：Ver1.00以降
FX3GC	：Ver1.40以降
FX3U	：Ver2.20以降
FX3UC	：Ver1.00以降

他の四則演算(加算・減算・乗算)については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

【三菱FXシリーズ】加算(ADD)命令の指令方法とラダープログラム例

【三菱FXシリーズ】減算(SUB)命令の指令方法とラダープログラム例

【三菱FXシリーズ】乗算(MUL)命令の指令方法とラダープログラム例

1. 除算命令の指令方法

除算命令には、4種類の指令方法があります。

DIV	：16ビット連続実行形
DIVP	：16ビットパルス実行形
DDIV	：32ビット連続実行形
DDIVP	：32ビットパルス実行形

DIVは、除算(Division)の略です。

メモ

連続実行形は、入力条件がONしている間、毎スキャン実行される命令です。
パルス実行形は、入力条件がONしたときの1スキャンのみ実行される命令です。

DIV：16ビット連続実行形（基本の形）

16ビット連続実行形の除算命令は”DIV”と指令します。

こちらがDIV命令を使用したラダープログラム例です。

このラダープログラムは、入力条件であるX0がONしている間、データレジスタD0をD1で割ったときの商をD2、剰余(余り)をD3に転送します。

[DIV D0 D1 D2]の動作は以下のようになります。

注意

ラダープログラム上ではD3を指令していませんが、他の用途で使用できなくなります。

DIV命令は連続実行形であるため、X0がON中にD0またはD1の値が変わるとD2・D3の値も追従して変わります。

先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で DIV D0 D1 D2 と入力してEnterキーを押すと挿入されます。(小文字でもOKです。)

DIVP：16ビットパルス実行形

16ビットパルス実行形の除算命令は”DIVP”と指令します。

こちらがDIVP命令を使用したラダープログラム例です。

連続実行形(DIV命令)との違いは、入力条件X0がON中にD0またはD1の値が変化してもD2・D3の値は追従して変化しないことです。

X0がONした瞬間のD0をD1で割ったときの商をD2、剰余(余り)をD3に格納します。

メモ

入力条件がOFF→ONしたときに除算命令が1スキャンだけ実行します。

DDIV・DDIVP：32ビット実行形

32ビット連続実行形の除算命令は”DDIV”と指令します。

32ビットパルス実行形の除算命令は”DDIVP”と指令します。

こちらがDDIV・DDIVP命令を使用したラダープログラム例です。

32ビット実行形の場合、演算元のデバイスは指定されたデータレジスタを若番とする2ワード(32ビット)長として扱われます。演算先は指定されたデータレジスタを若番とする2ワードを商とし、指定されたデータレジスタ+2,+3を剰余(余り)として扱われます。

↑のラダープログラムの場合、D4・D5が商、D6・D7が剰余(余り)となります。

注意

ラダープログラム上ではD1・D3・D5・D6・D7を指令していませんが、他の用途で使用できなくなります。(特に演算先が4ワード長になるので要注意です。)

2.【例題①】1ワード長の除算値を求める(商と剰余)

下記仕様のラダープログラムを除算命令を用いて解説します。

仕様

スイッチ(X0)を押すと、データレジスタD0に定数7を転送する。
スイッチ(X1)を押すと、データレジスタD0に定数10を転送する。
スイッチ(X2)を押すと、データレジスタD0を定数2で除算した商をD2、剰余(余り)をD3に転送する。
スイッチ(X7)を押すと、D0に定数0を転送する。
※スイッチが同時に複数ONすることはないとする。

データレジスタに定数を転送するため、今回は転送(MOV)命令を使用します。

転送(MOV)命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

【三菱FXシリーズ】転送(MOV)命令の指令方法とラダープログラム例

タイムチャート

タイムチャートは以下のようになります。

入力リレーX0がONすると、データレジスタD0に定数7を転送します。入力リレーX1がONすると、D0に定数10を転送します。

入力リレーX2がONすると、データレジスタD0を定数2で除算した商をD2、剰余(余り)をD3に転送します。

入力リレーX7がONすると、データレジスタD0に定数0を転送します。(リセット的な意味)

GOTの動作イメージ

GOTの動作イメージは以下のようになります。

スイッチ(X0)を押すとデータレジスタD0に定数7を、スイッチ(X1)を押すと定数10を転送します。

スイッチ(X2)を押すと、データレジスタD0を定数2で除算した商をD2、剰余(余り)をD3に転送します。

スイッチ(X7)を押すと、データレジスタD0に定数0を転送します。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

D0に定数7・10を転送するために転送(MOV)命令を使用しています。

X2がONすると、除算(DIV)命令が実行されてD0を定数2で除算した商をD2、剰余をD3に転送します。

X7がONすると、D0に定数0を転送しています。

注意

X7がONしただけでは、D2,D3は”0”になりません。
D2を”0”にするためには、D0が”0”の状態でX2をONさせる必要があります。

3.【例題②】2ワード長の除算値を求める(商と剰余)

下記仕様のラダープログラムを除算命令を用いて解説します。

仕様

スイッチ(X0)を押すと、データレジスタD0,D1に定数70,000を転送する。
スイッチ(X1)を押すと、データレジスタD0,D1に定数80,000を転送する。
スイッチ(X2)を押すと、データレジスタD0,D1を定数20,000で除算した商をD2,D3、剰余をD4,D5に転送する。
スイッチ(X7)を押すと、D0,D1に定数0を転送する。
※スイッチが同時に複数ONすることはないとする。

【例題①】と考え方は同じですが、扱う定数の値が大きいのでデータレジスタは2ワード(32ビット)長で使用します。