アナンシェータとは「設備」の異常や故障を検出した際に『ランプを点灯させると共にブザーを鳴動させてオペレータ(作業者)に注意を喚起する』システムのことをいいます。
「設備」と表現しましたが、ラダープログラムで制御する対象を全般的に指します。
三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるアナンシェータとは『ユーザーで作成した設備において異常・故障検出用のプログラムに使用すると便利な内部リレー』とされているビットデバイスです。
アナンシェータはラダープログラム上で”F”と指定するビットデバイスです。
このアナンシェータ(F)を用いることにより、設備の異常や故障(アラーム)を他のデバイスと区別化でき、後述する特殊デバイスと組み合わせることで「どの異常がどの順番で幾つ発生しているか」簡単にモニタすることができます。
ただし、他のビットデバイスとは異なる特殊な動作をするケースがあるので、注意(落とし穴)があることも否めません。
この記事では、三菱電機製シーケンサQシリーズ(ユニバーサルモデル)におけるアナンシェータ(F)の機能と動作例を解説します。
Qシリーズのユニバーサルモデルは以下型式のCPUユニットを指します。
- Q00U(J)CPU
- Q01UCPU
- Q02UCPU
- Q03UD(E)CPU
- Q03UDVCPU
- Q04UD(E)HCPU
- Q04UDVCPU
- Q04UDPVCPU
- Q06UD(E)HCPU
- Q06UDVCPU
- Q06UDPVCPU
- Q10UD(E)HCPU
- Q13UD(E)HCPU
- Q13UDVCPU
- Q13UDPVCPU
- Q20UD(E)HCPU
- Q26UD(E)HCPU
- Q26UDVCPU
- Q26UDPVCPU
- Q50UDEHCPU
- Q100UDEHCPU
目次
1. アナンシェータのデバイス番号
使用できるアナンシェータ(F)のデバイス番号は以下のようになります。
F0~F2047 | :2048点 |
デバイス番号は”10進数”表記です。
プログラム内での接点(a接点・b接点)の使用数は、プログラム容量内であれば制限はありません。
2. アナンシェータの機能
作成したラダープログラムにおいて「設備」の異常や故障を検出した場合にアナンシェータをONさせます。アナンシェータがONすると、関連する特殊デバイスが以下のように動作します。
SM62 | :アナンシェータが1ヶでもONするとONする |
SD62 | :一番最初にONしたアナンシェータの番号を格納する |
SD63 | :現在ONしているアナンシェータの個数を格納する |
SD64~SD79 | :ONした順番にアナンシェータ番号を格納する |
SD62、SD64~SD79の番号とはデバイス番号のことです。例えばアナンシェータF100がONすると”100”が格納されます。
SD64には一番最初にONしたアナンシェータの番号が格納されます。つまり「SD62とSD64」には同一の番号が格納されます。
大きな特徴(デメリット?)として、アナンシェータが1ヶでもONするとCPUユニット前面のUSER LED(赤色)が点灯します。
特殊デバイスを操作することにより「アナンシェータがONしてもUSER LEDが点灯しないようにする」方法があります。詳細は5. USER LEDの点灯設定で解説します。
3. アナンシェータのON/OFF方法
アナンシェータをON/OFFにはセット・リセット命令を使用します。※OUT命令でコイルを用いることも可能ですが、推奨されていません。
こちらがアナンシェータをON/OFFさせるラダープログラム例です。
このラダープログラムは、アナンシェータF10をON/OFFするものです。
入力リレーX10がONすると、セット(SET)命令にてF10がONします。その後、X10がOFFしてもF10はONし続けます。
入力リレーX20がONすると、リセット(RST)命令にてF10がOFFします。
X10とX20が両方ONした場合、後に立上り(OFF→ON)入力された処理が優先されます。
タイムチャート見るとややこしいですが、都度立上り(OFF→ON)になった命令が実行されます。
三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるセット・リセット命令は以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。(アナンシェータについては除外してあります。)
【三菱Qシリーズ】セット・リセット(SET・RST)命令の指令方法とラダープログラム例4.【例題】アナンシェータで異常番号を表示
下記仕様のラダープログラムをアナンシェータを用いて解説します。
スイッチ(X20)を押すと、アナンシェータ(F10)がOFFする。
同様の処理をアナンシェータ(F11)~(F14)についても行う。(下記参照)
GOT上に「最初に発生した異常番号」「異常が発生している個数」「発生した異常番号(発生順)」を各々表示する。
アナンシェータがOFFすると「発生した異常番号(発生順)」の対象番号は詰められる。
スイッチとアナンシェータの番号は以下のようになります。
異常発生 | リセット | アナンシェータ |
---|---|---|
スイッチ(X10) | スイッチ(X20) | アナンシェータ(F10) |
スイッチ(X11) | スイッチ(X21) | アナンシェータ(F11) |
スイッチ(X12) | スイッチ(X22) | アナンシェータ(F12) |
スイッチ(X13) | スイッチ(X23) | アナンシェータ(F13) |
スイッチ(X14) | スイッチ(X24) | アナンシェータ(F14) |
複雑なラダープログラムを組むことなく2.アナンシェータの機能で前述した特殊デバイスを用いて上記仕様を作成します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
左側の”発生”と表記された赤スイッチを押すと、X10~X14のいずれかがONします。赤スイッチONにてアナンシェータがONしている間、対応した赤スイッチは点灯します。
赤スイッチが押されてアナンシェータがONすると、右側の特殊デバイスが動作します。
スイッチ(X20)を押してアナンシェータF10をOFFすると、SD64以降の異常番号が前に詰まります。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
何も難しいことはしていません。セット・リセット命令で各アナンシェータをON/OFFさせます。
注意点
アナンシェータには大きな注意点があります。
3. アナンシェータのON/OFF方法でも述べた通り、セット命令とリセット命令の入力条件が両方ONした場合、後に立上り(OFF→ON)入力された処理が優先されます。
つまり、異常が継続して発生し続けている状態でリセット命令を実行するとアナンシェータはOFFしてしまいます。
リセット命令の入力条件に「異常条件がOFFしているとき」といった条件を入れる等の対策が必要になる場合があります。
5. USER LEDの点灯設定
2. アナンシェータの機能でも述べた通り、アナンシェータが1ヶでもONするとCPUユニット前面のUSER LED(赤色)が点灯します。
このUSER LEDはアナンシェータの他に「演算エラー」「拡張命令エラー」といったラダープログラム開発段階に点灯する機会が多く、アナンシェータのような設備側の異常発生で点灯すると違和感を覚える技術者が大半です。(※私の周りでは)
アナンシェータがONしたとき、USER LEDを点灯させない方法があります。
特殊デバイスのSD208の8,9,A,Bビットに”0”を書き込むことでUSER LEDはアナンシェータがONしても点灯しません。
このラダープログラムは、SD208の8,9,A,BビットをRUNになった瞬間(SM402)にリセット命令にて”0”にします。(リセットします。)
手法は問いませんが、このようにSD208の8,9,A,BをOFFすることでアナンシェータ発生時であってもCPUユニット前面のUSER LEDは点灯しなくなります。
6. おわりに
三菱電機製シーケンサQシリーズ(ユニバーサルモデル)におけるアナンシェータ(F)の機能と動作例について解説しました。
アナンシェータ、及びエラー表示のリセットにはLEDR命令と呼ばれる命令があります。これは後日記事にまとめたいと思います。
以下の参考書は、シーケンス制御・ラダープログラムについて詳しく解説しているものです。
本書は私が通っていた短大のシーケンス制御の講義に教科書として使用していました。
シーケンス制御で必要なスキルはリレー回路やラダープログラムを組めることだけではなく、ソレノイドバルブやインダクションモータなどの機器を理解していなければなりません。本書では、それらの機器を実際の機構を交えて解説しています。
ラダープログラムは基礎部分から、一連動作を組むまで解説していますので中級者が読んでも意味がある内容です。
Q03UDV機種で F0の[SET] [RESET]の回路が無いのに
F0がON-OFFを繰り返します
原因が分かりません 教えてください よろしくお願いいたします