三菱電機製シーケンサQシリーズにおける「ティーチングタイマ」命令とは、デバイスがONした時間を測定し、その時間をワードデバイスに格納するラダープログラム命令です。
ティーチングタイマ命令を用いることにより「センサがワークを検出した時間」や「スイッチが押された時間」をデータレジスタやファイルレジスタといったワードデバイスに格納することができます。
この記事では、三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるティーチングタイマ命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサQシリーズにおいて、ティーチングタイマ命令は以下のCPUで使用することが可能です。
High performance | :ハイパフォーマンスモデルQCPU |
Process | :プロセスCPU |
Universal | :ユニバーサルモデルQCPU |
LCPU | :LCPU |
※MELSEC-Lシリーズも含まれていますがご了承ください。
目次
1. ティーチングタイマ命令の指令方法
ティーチングタイマ命令には、1種類の指令方法があります。
TTMR | :ティーチングタイマ命令 |
TTMRは、ティーチングタイマ(Teaching timer)の略です。
こちらがTTMR命令を使用したラダープログラム例です。
このラダープログラムは、X0がONした時間を”秒単位”でデータレジスタD0に格納します。その後、X0がOFFしてもD0は”0”にリセットされず値が保持されます。
↑のラダープログラムはX0を約7秒間ONした後、少し間を空けて約4秒間ONしています。
データレジスタD0は、実行条件であるX0がOFF→ONになったとき”0”にリセットされます。
TTMR命令には「測定した時間を格納するデバイス」の他に「測定した時間の乗数」を指定する必要があります。↑のラダープログラムの場合「測定した時間の乗数」はK0を指定しており乗数は”1”となります。
TTMR命令の「測定した時間の乗数」は以下のように0~2を指定します。
TTMR命令内の指定値 | 乗数 |
---|---|
0 | 1 |
1 | 10 |
2 | 100 |
TTMR命令内で指定する値が0~2の場合、各々のデータレジスタは以下のようになります。
K2と指令した場合、1の位には必ず”0”が入ります。
先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で TTMR D0 K0 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。 (小文字でもOKです。)
2.【例題①】スイッチが押された時間を測定(1秒単位)
下記仕様のラダープログラムをティーチングタイマ命令を用いて解説します。
ティーチングタイマ命令を用いることで、タイマ(T)や転送命令を使用せずに押された時間をデータレジスタに格納することができます。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)が押された時間を”1秒単位”でデータレジスタD0に格納します。
データレジスタD1にはCPUユニットの内部演算用として値が格納されます。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
入力条件をX0とするTTMR命令を用いることで、スイッチ(X0)が押された時間を測定します。
TTMR命令で「測定した時間を格納するデバイスにD0」「測定した時間の乗数にK0」を指定することでD0に”1秒単位”の時間が格納されます。
3.【例題②】スイッチが押された時間を測定(0.1秒単位)
下記仕様のラダープログラムをティーチングタイマ命令を用いて解説します。
TTMR命令における「測定した時間の乗数」に”1”を指定することで0.1秒の測定時間を格納します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)が押された時間を”0.1秒単位”でデータレジスタD0に格納します。
0.1秒単位の測定の場合、D1には内部演算用の値は格納されませんでした。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
TTMR命令で「測定した時間の乗数にK1」を指定することでD0に”0.1秒単位”の時間が格納されます。
4. おわりに
三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるティーチングタイマ命令について解説しました。
今回解説に使用したラダープログラムは、ティーチングタイマ命令を使用しなくてもタイマ(T)と転送(MOV)命令を使用することで作成することができます。(どこかで記事にします。)
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
『doda』といった大手求人(転職)サイトには電気・制御設計の求人が数多く紹介されています。※登録は無料です。
「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。