三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズにおける「BINインクリメント」命令とは、指定したBINデータに1を加算するラダープログラム命令です。
この記事では、三菱電機製シーケンサiQ-FシリーズにおけるBINインクリメント命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズにおいて、BINインクリメント命令は以下のCPUで使用することが可能です。
| FX5UJ | :使用可 |
| FX5U | :使用可 |
| FX5UC | :使用可 |
三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズでは、指定したBINデータに1を減算するBINデクリメント(DEC)命令が用意されています。BINデクリメント(DEC)命令については以下のページで解説しております。
目次
1. BINインクリメント命令の指令方法
BINインクリメント命令には、8種類の指令方法があります。
| INC | :符号付き16ビット連続実行形 |
| INCP | :符号付き16ビットパルス実行形 |
| INC_U | :符号なし16ビット連続実行形 |
| INCP_U | :符号なし16ビットパルス実行形 |
| DINC | :符号付き32ビット連続実行形 |
| DINCP | :符号付き32ビットパルス実行形 |
| DINC_U | :符号なし32ビット連続実行形 |
| DINCP_U | :符号なし32ビットパルス実行形 |
パルス実行形は、入力条件がONしたときの1スキャンのみ実行される命令です。
各データ型の表現範囲は以下のようになります。
| 符号付き16ビット形 | :-32768~+32767 |
| 符号なし16ビット形 | :0~65535 |
| 符号付き32ビット形 | :-2147483648~+2147483647 |
| 符号なし32ビット形 | :0~4294967295 |
INC(_U):16ビット連続実行形(基本の形)
符号付き16ビット連続実行形のBINインクリメント命令は INC と指令します。
こちらがINC命令を使用したラダープログラム例です。

このラダープログラムでは、入力条件であるX0がONしている間、データレジスタD0が毎スキャン1ずつ加算され続けます。
入力条件がONするたびに指定したデバイスを1ずつ加算する場合、入力条件を1スキャンパルス化するか、後述するパルス実行形を使用する必要があります。
符号なし16ビット連続実行形のBINインクリメント命令は INC_U と指令します。
こちらがINC_U命令を使用したラダープログラム例です。

先ほどのラダープログラムはGX Works3の回路上で INC D0 と入力してEnterキーを押すと挿入されます。(小文字でもOKです。)

INCP(_U):16ビットパルス実行形
符号付き16ビットパルス実行形のBINインクリメント命令は INCP と指令します。
こちらがINCP命令を使用したラダープログラム例です。

このラダープログラムでは、入力条件であるX0がONするたび、データレジスタD0が1ずつ加算されます。
この時、入力条件がONしている時間は関係ありません。入力条件がOFF→ONになった瞬間に1だけインクリメント(+1)が実行されます。
符号なし16ビットパルス実行形のBINインクリメント命令は INCP_U と指令します。
こちらがINCP_U命令を使用したラダープログラム例です。

DINC(_U)・DINCP(_U):32ビット実行形
符号付き32ビット連続実行形のBINインクリメント命令は DINC と指令します。
符号付き32ビットパルス実行形のBINインクリメント命令は DINCP と指令します。
符号なし32ビット連続実行形のBINインクリメント命令は DINC_U と指令します。
符号なし32ビットパルス実行形のBINインクリメント命令は DINCP_U と指令します。
こちらがDINC・DINCP・DINC_U・DINCP_U命令のラダープログラム例です。




32ビット実行形の場合、指定したデバイスを若番とする2ワード(32ビット)長として扱われます。↑のラダープログラムの場合、データレジスタD0・D1がインクリメント対象となります。
2.【例題】スイッチを押すたびデータレジスタをインクリメント
下記仕様のラダープログラムをBINインクリメント命令を用いて解説します。
スイッチ(X1)を押すと、データレジスタD0の値を「0」にする。
データレジスタD0の値を1ずつ加算する処理にBINインクリメント命令を使用します。
データレジスタD0の値を「0」にするには、転送(MOV)命令を使用します。
三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズにおける、転送(MOV)命令については以下のページで解説しております。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。

スイッチ(X0)を押すたび、データレジスタD0の値を1ずつ加算(インクリメント)します。
スイッチ(X1)を押すと、データレジスタD0の値を「0」にします。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。

X0がONすると、パルス実行形のBINインクリメント(INCP)命令が1回のみ実行されてデータレジスタD0の値を1加算(インクリメント)します。
X1がONすると、転送(MOV)命令が実行されてデータレジスタD0に「0」を転送します。
3. おわりに
三菱電機製シーケンサiQ-FシリーズにおけるBINインクリメント命令について解説しました。


