キーエンスKV-Xシリーズにおける「ブロック転送(BlockMove)FUN」は、転送元の値を転送先を先頭とする要素数分に一括転送するファンクションです。
ブロック転送(BlockMove)FUNを用いることにより、一回のFUNで「連続した値」を「他の連続した変数」にコピーすることができます。(n→n)
この記事では、キーエンスKV-X500/X300シリーズにおけるブロック転送(BlockMove)FUNの指令方法とラダープログラム、ST言語の例について解説します。
目次
1. ブロック転送FUNの指令方法
ブロック転送(BlockMove)FUNはLD表現(ラダープログラム)とST表現(ST言語)で使用することができます。

BlockMove(Src, Dst, Count);
ブロック転送(BlockMove)FUNは↓の引数で構成されています。
引数 | タイプ | データ型 | 初期値 | コメント |
---|---|---|---|---|
EN | IN | BOOL | – | イネーブル入力 |
ENO | OUT | BOOL | – | イネーブル出力 |
Src | IN | – | – | 転送元の先頭 |
Dst | IN-OUT | – | – | 転送先の先頭 |
Count | IN | UDINT | 0 | 転送要素数 |
LD表現
↓がLD表現で使用したラダープログラム例です。

このラダープログラムでは、InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)している間、InData[0]~[9](入力配列)の値をOutData[0]~[9](出力配列)に転送します。いずれも要素数10です。

InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)中にInData[0]~[9](入力配列)の値が変化すると、OutData[0]~[9](出力配列)の値も追従して変化します。
InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)した瞬間のみInData[0]~[9](入力配列)の値をOutData[0]~[9](出力配列)に転送する場合、「InFlag(入力フラグ)を立ち上がり検出(R_TRIG)ファンクションブロック等で微分化する」または「ブロック転送(BlockMove)FUNを微分指定する」方法があります。
立ち上がり検出(R_TRIG)ファンクションブロックについては以下のページで解説しております。

微分指定する場合、命令の引数設定ダイアログで微分(E)にチェックを入れます。

ST表現
↓がST表現で使用したST言語例です。
IF InFlag THEN
BlockMove(Src := InData[0], Dst := OutData[0], Count := UDINT#10);
END_IF;
このSTでは、InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)している間、InData[0]~[9](入力配列)の値をOutData[0]~[9](出力配列)に転送します。※前述のLD表現と同じ動作です。
2.【例題】配列型変数の一部をブロック転送
下記仕様のラダープログラム、STをブロック転送(BlockMove)FUNを用いて解説します。
スイッチ黄を押すと、配列型変数Ary01[1]~[3]の値をAry00[1]~[3]に転送する。
スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理を適用する。
配列型変数はいずれも一次元配列、要素は[0]~[4]の要素数5とする。
ブロック転送(BlockMove)FUNの転送元の先頭と転送先の先頭にAry00[1]またはAry01[1]、転送要素数に「3」を指定します。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

スイッチ緑を押すと、配列型変数Ary00[1]~[3]の値をAry01[1]~[3]に転送します。
スイッチ黄を押すと、配列型変数Ary01[1]~[3]の値をAry00[1]~[3]に転送します。
スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理が適用されます。
使用する変数
使用する変数は以下になります。
変数 | データ型 | コメント |
---|---|---|
R_TRIG1 | R_TRIG | FBインスタンス |
R_TRIG2 | R_TRIG | FBインスタンス |
SwGreen | BOOL | スイッチ緑 |
SwYellow | BOOL | スイッチ黄 |
Ary00 | ARRAY[0..4] OF UINT | 配列00 |
Ary01 | ARRAY[0..4] OF UINT | 配列01 |
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。

立ち上がり検出(R_TRIG)を使用することにより、各スイッチの立ち上がり(FALSE→TRUE)を検出した時のみブロック転送(BlockMove)FUNが実行されます。
転送元の先頭にAry00[1]、転送先の先頭にAry01[1]、転送要素数にUDINT#3を指令することで、Ary00[1]~[3]の値をAry01[1]~[3]に転送します。(1行目のスイッチ緑押下)
転送元の先頭にAry01[1]、転送先の先頭にAry00[1]、転送要素数にUDINT#3を指令することで、Ary01[1]~[3]の値をAry00[1]~[3]に転送します。(2行目のスイッチ黄押下)
ST言語
ST言語は以下のようになります。
//スイッチの立ち上がり検出
R_TRIG1(CLK := SwGreen);
R_TRIG2(CLK := SwYellow);
//スイッチ緑の立ち上がりでAry00[1]~[3]をAry01[1]~[3]に転送
IF R_TRIG1.Q THEN
BlockMove(Src := Ary00[1], Dst := Ary01[1], Count := UDINT#3);
END_IF;
//スイッチ黄の立ち上がりでAry01[1]~[3]をAry00[1]~[3]に転送
IF R_TRIG2.Q THEN
BlockMove(Src := Ary01[1], Dst := Ary00[1], Count := UDINT#3);
END_IF;
3. おわりに
キーエンスKV-X500/X300シリーズにおけるブロック転送(BlockMove)FUNについて解説しました。
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