ラダープログラムにおけるカウンタとは、入力条件がONした回数をPLC内部で加算し、設定回数に達すると接点が動作するデバイスです。
三菱電機製のPLCであるFXシリーズでは、カウンタは C と表記します。
この記事では、三菱FXシリーズにおける使用できるカウンタのデバイス番号とカウンタの種類について解説します。
目次
1. 使用できるカウンタのデバイス番号
三菱FXシリーズの場合、使用できるカウンタのデバイス番号はPCタイプによって相違があり、指定するカウンタ番号によって機能が異なります。
FX3Sシーケンサ
FX3Sシーケンサで使用できるカウンタ番号は以下のようになります。
C0~C15 | :16ビットアップカウンタ(一般用) |
C16~C31 | :16ビットアップカウンタ(停電保持専用) |
C200~C234 | :32ビットアップ/ダウンカウンタ(一般用) |
『16ビットカウンタは0~32767』、『32ビットカウンタは-2147483648~+2147483647』の数値を扱うことが可能です。
FX3G・FX3GCシーケンサ
FX3G・FX3GCシーケンサで使用できるカウンタ番号は以下のようになります。
C0~C15 | :16ビットアップカウンタ(一般用) |
C16~C199 | :16ビットアップカウンタ(停電保持専用) |
C200~C219 | :32ビットアップ/ダウンカウンタ(一般用) |
C220~C234 | :32ビットアップ/ダウンカウンタ(停電保持専用) |
『16ビットカウンタは0~32767』、『32ビットカウンタは-2147483648~+2147483647』の数値を扱うことが可能です。
FX3U・FX3UCシーケンサ
FX3U・FX3UCシーケンサで使用できるカウンタ番号は以下のようになります。
C0~C99 | :16ビットアップカウンタ(一般用) |
C100~C199 | :16ビットアップカウンタ(停電保持用) |
C200~C219 | :32ビットアップ/ダウンカウンタ(一般用) |
C220~C234 | :32ビットアップ/ダウンカウンタ(停電保持用) |
『16ビットカウンタは0~32767』、『32ビットカウンタは-2147483648~+2147483647』の数値を扱うことが可能です。
C0~C99、C200~C219はパラメータ設定により停電保持領域に変更可能です。
C100~C199、C220~C234はパラメータ設定により一般(非停電保持)領域に変更可能です。
2. カウンタの機能と動作例
上記の表では、16ビットアップカウンタ(一般用)や32ビットアップ/ダウンカウンタ(停電保持用)など様々な種類のカウンタを紹介しました。それぞれのカウンタの機能を解説します。
16ビットアップカウンタ(一般用・停電保持用)
上記の表で、『16ビットアップカウンタ』は設定値がK1~K32767(10進数)を指定することができるカウンタです。
一般用はシーケンサの電源がOFFするとカウント値がクリアされますが、停電保持用は電源がOFFしてもカウント値がクリアされずに保持されます。
以下のラダープログラムを用いて解説します。(FX3Gの場合)
このラダープログラムは『入力リレーX0が5回ONすると、出力リレーY0がONして、入力リレーX1がONすると出力リレーY0はOFFする』ものです。
5回ONしたことをカウントするためカウンタC0を使用しており、Kから始まる設定値はK5を指定してあります。
以下はGX Works2で各デバイスをモニタした様子です。
※各デバイスはON状態になると青色になります。
入力リレーX0がONすることで、カウンタC0がカウントアップします。カウンタの現在値はC0のコイル部分に青字で表示されています。
カウンタC0の設定値はK5(5回)が指定されているので、X0が5回ONするとカウンタC0のa接点がONします。
カウンタC0のa接点がONすると、出力リレーY0がONします。
カウンタが設定値に到達後、入力条件が繰り返しONしてもカウンタのカウント値は設定値を超過することはありません。↑のラダープログラムの場合、カウンタC0のカウント値は5を超えることはありません。
カウンタのカウント値を0に戻るためには、リセット(RST)命令を使用する必要があります。リセット命令が実行されたカウンタのカウント値は0に戻り、a接点がONしている場合はOFFになります。
32ビットアップ/ダウンカウンタ(一般用・停電保持用)
上記の表で、『32ビットアップ/ダウンカウンタ』は設定値がK-2147483648~K2147483647(10進数)を指定することができるカウンタです。
アップカウンタの場合、入力条件がONするたびに1ずつ加算されますが、本項のアップダウンカウンタは『1ずつ加算』または『1ずつ減算』を選択することができます。
カウンタの方向は、特殊デバイスのM8200~M8234にて選択をします。以下にカウンタ番号とその方向を切換える特殊デバイス番号です。
特殊デバイスM8200~M8234をONさせることで、対応したカウンタの方向が『1ずつ減算』になります。特殊デバイスの状態がOFFであればカウンタは『1ずつ加算』になります。
以下のラダープログラムを用いて解説します。(FX3Gの場合)
カウンタC200は32ビットアップ/ダウンカウンタであり、設定値にK-7が指定されています。
以下はGX Works2で各デバイスをモニタした様子です。
入力リレーX2にて特殊デバイスM8200をONした状態で、入力リレーX0をONするとカウンタC200は『1ずつ減算』します。
少しややこしいですが、カウンタC200の設定値にはK-7が指定されており「C200のカウント値が-7を下回った後に、-7以上になるとC200のa接点がON」します。
32ビットアップ/ダウンカウンタは+2147483647から1を加算すると-2147483648になります。同様に-2147483648から1を減算すると+2147483647になります。このような動作をリングカウンタと呼びます。
3. おわりに
この記事では、三菱FXシリーズにおける使用できるカウンタのデバイス番号とカウンタの種類について解説しました。
使用するPCタイプによって使用できるデバイス番号が異なり、カウンタ番号によって機能が異なりますのでご注意ください。
- カウンタは設定した回数ONすると接点が動作するデバイス
- 三菱FXシリーズの中でもPCタイプによって使用できるカウンタ番号が異なる
- 一般用のカウンタは電源OFFでカウント値がクリアされる
- 停電保持用のカウンタは電源OFFでもカウント値がクリアされない
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