三菱電機製シーケンサiQ-Rシリーズにおける「接点形比較」命令とは、定数やデバイスの値を比較して条件に合致していれば接点がONするラダープログラム命令です。
接点形比較命令を用いることで、データレジスタやファイルレジスタといったワードデバイスの大小を比較して条件分岐したり、特定のデバイス値であるか判断して処理を実行することができます。
この記事では、三菱電機製シーケンサiQ-Rシリーズにおける接点形比較命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサiQ-Rシリーズにおいて、接点形比較命令は以下のCPUで使用することが可能です。
RnCPU | :使用可 |
RnENCPU | :使用可 |
RnPCPU(プロセス) | :使用可 |
RnPCPU(二重化) | :使用可 |
RnPSFCPU(一般) | :使用可 |
RnPSFCPU(安全) | :使用可 |
RnSFCPU(一般) | :使用可 |
RnSFCPU(安全) | :使用可 |
※iQ-Rシリーズにおいて、接点形比較命令を使用できないCPUはありません。
三菱電機製シーケンサQシリーズ、FXシリーズにおける接点形比較命令は以下のページで解説しております。※iQ-Rシリーズと同様の使い勝手で指令できるため、類似した記事になります。
【三菱Qシリーズ】接点形比較命令の指令方法とラダープログラム例 【三菱FXシリーズ】接点形比較命令の指令方法とラダープログラム例目次
1. 接点形比較命令の指令方法
接点形比較命令には、12種類の指令方法があります。
LD= | A = B | :AとBが等しい | :16ビット実行形 |
LDD= | A = B | :AとBが等しい | :32ビット実行形 |
LD> | A > B | :AがBより大きい | :16ビット実行形 |
LDD> | A > B | :AがBより大きい | :32ビット実行形 |
LD< | A < B | :AがBより小さい | :16ビット実行形 |
LDD< | A < B | :AがBより小さい | :32ビット実行形 |
LD<> | A ≠ B | :AとBが等しくない | :16ビット実行形 |
LDD<> | A ≠ B | :AとBが等しくない | :32ビット実行形 |
LD<= | A ≦ B | :AがB以下 | :16ビット実行形 |
LDD<= | A ≦ B | :AがB以下 | :32ビット実行形 |
LD>= | A ≧ B | :AがB以上 | :16ビット実行形 |
LDD>= | A ≧ B | :AがB以上 | :32ビット実行形 |
AとBには比較対象である「ワードデバイス」や「定数」、「桁指定がされたビットデバイス」を指定します。
上記12種類の命令を指定した場合、データは符号付きとして扱われます。データを符号無しとして扱う場合は命令に「_U」を追記します。
LD=:AとBが等しい
AとBが等しいとき(A=B)にONする接点形比較命令は”LD=”と指令します。
こちらがLD=命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、データレジスタD0とD1の値が等しいときに内部リレーM0がONします。
LD=命令は16ビット実行形のため、各データレジスタは1ワード(16ビット)長として扱われます。
32ビット実行形であるLDD=命令の場合、比較対象は2ワード(32ビット)長として扱われます。
このラダープログラムは、データレジスタD0・D1とD2・D3の値が等しいときに内部リレーM0がONします。
先ほどのラダープログラムはGX Works3の回路上で『LD= D0 D1』と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。(小文字でもOKです。)
32ビット実行形の場合、『LDD=』と入力します。
LD>:AがBより大きい
AがBより大きいとき(A>B)にONする接点形比較命令は”LD>”と指令します。
こちらがLD>命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、データレジスタD0がD1より大きいときに内部リレーM0がONします。
LD>命令は16ビット実行形のため、各データレジスタは1ワード(16ビット)長として扱われます。
32ビット実行形であるLDD>命令の場合、比較対象は2ワード(32ビット)長として扱われます。
このラダープログラムは、データレジスタD0・D1がD2・D3より大きいときに内部リレーM0がONします。
LD<:AがBより小さい
AがBより小さいとき(A<B)にONする接点形比較命令は”LD<”と指令します。
こちらがLD<命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、データレジスタD0がD1より小さいときに内部リレーM0がONします。
LD<命令は16ビット実行形のため、各データレジスタは1ワード(16ビット)長として扱われます。
32ビット実行形であるLDD<命令の場合、比較対象は2ワード(32ビット)長として扱われます。
このラダープログラムは、データレジスタD0・D1がD2・D3より小さいときに内部リレーM0がONします。
LD<>:AとBが等しくない
AとBが等しくないとき(A≠B)にONする接点形比較命令は”LD<>”と指令します。
こちらがLD<>命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、データレジスタD0とD1の値が等しくないときに内部リレーM0がONします。
LD<>命令は16ビット実行形のため、各データレジスタは1ワード(16ビット)長として扱われます。
32ビット実行形であるLDD<>命令の場合、比較対象は2ワード(32ビット)長として扱われます。
このラダープログラムは、データレジスタD0・D1とD2・D3の値が等しくないときに内部リレーM0がONします。
LD<=:AがB以下
AがB以下のとき(A≦B)にONする接点形比較命令は”LD<=”と指令します。
こちらがLD<=命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、データレジスタD0がD1以下のときに内部リレーM0がONします。
LD<=命令は16ビット実行形のため、各データレジスタは1ワード(16ビット)長として扱われます。
32ビット実行形であるLDD<=命令の場合、比較対象は2ワード(32ビット)長として扱われます。
このラダープログラムは、データレジスタD0・D1がD2・D3以下のときに内部リレーM0がONします。
LD>=:AがB以上
AがB以上のとき(A≧B)にONする接点形比較命令は”LD>=”と指令します。
こちらがLD>=命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、データレジスタD0がD1以上のときに内部リレーM0がONします。
LD>=命令は16ビット実行形のため、各データレジスタは1ワード(16ビット)長として扱われます。
32ビット実行形であるLDD>=命令の場合、比較対象は2ワード(32ビット)長として扱われます。
このラダープログラムは、データレジスタD0・D1がD2・D3以上のときに内部リレーM0がONします。
2.【例題】データレジスタと定数を比較
下記仕様のラダープログラムを接点形比較命令を用いて解説します。
・D0が5と等しいとき、ランプ(Y0)が点灯する。
・D0が5と等しくないとき、ランプ(Y1)が点灯する。
・D0が5より大きいとき、ランプ(Y2)が点灯する。
・D0が5より小さいとき、ランプ(Y3)が点灯する。
接点形比較命令を用いてデータレジスタと定数を比較します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
※使用していないデバイスが多々ありますがご了承ください。
GOTから数値を入力できるデータレジスタD0と、定数5を比較してランプを点灯させます。
- D0が5と等しいとき、ランプ(Y0)が点灯
- D0が5と等しくないとき、ランプ(Y1)が点灯
- D0が5より大きいとき、ランプ(Y2)が点灯
- D0が5より小さいとき、ランプ(Y3)が点灯
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
接点形比較命令を用いて、各ランプに対応した出力リレーをONさせます。
3. おわりに
三菱電機製シーケンサiQ-Rシリーズにおける接点形比較命令について解説しました。
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
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「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。