【三菱FXシリーズ】一括転送(BMOV)命令の指令方法とラダープログラム例

00_【三菱FXシリーズ】一括転送(BMOV)命令の指令方法とラダープログラム例

「一括転送」命令とは、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける複数のデータを指定した点数のデバイスに一括で転送するラダープログラム命令です。

一括転送命令を用いることにより、1回の命令で「連続したデバイスの値」を「他の連続したデバイス」にコピーすることができます。(n点→n点)

この記事では、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける一括転送命令の指令方法ラダープログラム例を解説します。

注意
この記事中のラダープログラムはGX Works2で作成しており、PCタイプはFX3G/FX3GCに設定してあります。

三菱電機製シーケンサFXシリーズにおいて、一括転送命令は以下のシーケンサ・バージョンで使用することが可能です。

FX3S:Ver1.00以降
FX3G:Ver1.00以降
FX3GC:Ver1.40以降
FX3U:Ver2.20以降
FX3UC:Ver1.00以降

よく似た命令で多点転送(FMOV)命令があります。BMOV命令の転送元は複数に対してFMOV命令の転送元は1つになります。(1点→n点)

多点転送命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_【三菱FXシリーズ】多点転送(FMOV)命令の指令方法とラダープログラム例【三菱FXシリーズ】多点転送(FMOV)命令の指令方法とラダープログラム例

1. 一括転送命令の指令方法

一括転送命令には、2種類の指令方法があります。

BMOV:連続実行形
BMOVP:パルス実行形

BMOVとは、Block moveの略です。

メモ
連続実行形は、入力条件がONしている間、毎スキャン実行される命令です。
パルス実行形は、入力条件がONしたときの1スキャンのみ実行される命令です。

BMOV:連続実行形(基本の形)

連続実行形の一括転送命令は”BMOV”と指令します。

こちらがBMOV命令を使用したラダープログラム例です。

10_BMOV命令

このラダープログラムは、入力条件であるX0がONしている間、データレジスタD0~D4(5ワード)の値をD10~D14に一括で転送するものです。K5は一括転送する点数を指定しています。

このラダープログラムの動作は以下のようなイメージです。

10_BMOV命令のイメージ

同じ動作のラダープログラムを転送(MOV)命令で作ると以下のようになります。

10_MOV命令の場合

MOV命令だと点数が多くなるとラダープログラムはさらに大きくなります。BMOV命令の場合、一括転送する点数は命令内の指定値で変えることができるのでラダープログラム量は大きくなりません。

ただし、BMOV命令で指定できる点数は512以下です。つまり1ヶのBMOV命令で一括転送できるのは最大512ワードとなります。

転送命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_【三菱FXシリーズ】転送(MOV)命令の指令方法とラダープログラム例【三菱FXシリーズ】転送(MOV)命令の指令方法とラダープログラム例

先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で BMOV D0 D10 K5 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。(小文字でもOKです。)

10_命令挿入

BMOVP:パルス実行形

パルス実行形の一括転送命令は”BMOVP”と指令します。

こちらがBMOVP命令を使用したラダープログラム例です。

11_BMOVP命令

連続実行形(BMOV命令)との違いは、入力条件である入力リレーX0がOFF→ONになった瞬間に1回だけ一括転送が実行されることです。

入力リレーX0がON中にD0~D4のデバイス値が変化しても、転送先であるD10~D14は追従して変化しません。

メモ
入力条件がOFF→ONしたときに一括転送命令が1スキャンだけ実行します。

2.【例題①】データレジスタを一括転送する(連続実行形)

下記仕様のラダープログラムを一括転送命令を用いて解説します。

仕様
データレジスタD0~D5のデバイス値をD10~D15に一括で転送する。
この処理をPLCがRUN中に常時行う。

GOTの動作イメージ

GOTの動作イメージは以下のようになります。

例題①_GOT

データレジスタD0~D5のデバイス値をD10~D15に一括で転送する処理を常に行います。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題①_ラダープログラム

PLCがRUN中に常時ONする特殊デバイスM8000を使用します。このM8000を入力条件とすることで、BMOV命令は常に実行されます。

BMOV命令でデータレジスタD0~D5の6ワードを、D10~D15に一括転送します。

3.【例題②】データレジスタを一括転送する(パルス実行形)

下記仕様のラダープログラムを一括転送命令を用いて解説します。

仕様
スイッチ(X0)が押された時、D0~D5のデバイス値をD10~D15に一括で転送する。
※一括転送はスイッチが押された瞬間のみ実行され、スイッチが押された状態でD0~D5のデバイス値が変更されても、D10~D15は反映されない。

スイッチが押された瞬間のみ一括転送を実行するため、X0を入力条件とするパルス実行形の一括転送命令を使用します。

GOTの動作イメージ

GOTの動作イメージは以下のようになります。

例題②_GOT

スイッチ(X0)が押された時、データレジスタD0~D5のデバイス値をD10~D15に一括で転送します。

スイッチが押された瞬間のみ一括転送が実行され、スイッチが押された状態でD0~D5のデバイス値が変更されても、D10~D15は反映されません。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題②_ラダープログラム

X0を入力条件とするパルス実行形の一括転送命令を使用します。

パルス実行形の一括転送命令を用いることにより、X0がOFF→ONになった瞬間のみ一括転送が実行されます。X0がON中にD0~D5の値を変えた場合、再度X0をOFF→ONしなければD10~D15に転送されません。

4. おわりに

三菱電機製FXシリーズにおける一括転送命令について解説しました。

よく似た命令で多点転送(FMOV)命令がありますが、動作が異なるので使用する際はご注意ください。(私はよくごっちゃになります…)

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