オムロンCJシリーズにおける「立上り微分」命令とは、入力条件が立上り(OFF→ON)になったとき、指定したリレーを1サイクルだけONさせるラダープログラム命令です。
立上り微分命令は「スイッチを長押ししても動作が連続して複数回実行しないようにする」等、入力条件がONし続けると不都合が生じる場合によく使用されます。
立上り微分命令は、別名ディフアップ命令や立上りパルス命令と呼ばれることがあります。
この記事では、オムロンCJシリーズにおける立上り微分命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
オムロンCJシリーズでは、対となる立下り微分(DIFD)命令が用意されています。立下り微分(DIFD)命令については以下のページで解説しております。
【オムロンCJ】立下り微分(DIFD)命令の指令方法とラダープログラム例目次
1. 立上り微分命令の指令方法
立上り微分命令には、動作オプションを含めると2種類の指令方法があります。
命令文 | 内容 | 動作オプション |
---|---|---|
DIFU | 立上り微分命令 | – |
!DIFU | 立上り微分命令 | 都度リフレッシュ |
DIFUは、微分(differential)とアップ(up)の略です。(だと思います。)
DIFU:立上り微分命令(動作オプション無し)
立上り微分命令(動作オプション無し)は”DIFU”と指令します。
こちらがDIFU命令を使用したラダープログラム例です。
このラダープログラムは、入力条件である0.00がOFF→ONになったとき、1.00が1サイクルだけONします。1サイクル後、本命令実行時に1.00はOFFします。
タイムチャートは以下のようになります。
入力条件である0.00がONすると、1サイクルだけ1.00がONします。↑のタイムチャートは1マスを1スキャンとしています。
この時、入力条件がONしている時間は関係ありません。入力条件がOFF→ONになった1サイクルのみ指定したリレーがONします。
先ほどのラダープログラムはCX-Programmerの回路上で DIFU 1.00 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。 ※スマートインプットモードの場合
!DIFU:立上り微分命令(都度リフレッシュオプション)
立上り微分命令(都度リフレッシュオプション)は”!DIFU”と指令します。
こちらが!DIFU命令を使用したラダープログラム例です。
都度リフレッシュオプションの立上り微分(!DIFU)命令は「ONするリレー(↑だと1.00)に出力リレーエリアを割付けることにより、ONするリレーを命令実行後にOUTリフレッシュする」ことができます。
動作オプション無しの立上り微分(!DIFU)命令と同様、1サイクルのみONします。
ラダープログラムのサイクル途中でOUTリフレッシュを行う必要が無い場合、都度リフレッシュオプションを使用する必要はありません。
2.【例題①】後入力を優先する自己保持回路
下記仕様のラダープログラムを立上り微分命令を用いて解説します。
スイッチ(0.01)を押すと、ランプ(1.00)が消灯する。
スイッチが双方押された場合、後から押された処理を優先する。
1.00の自己保持回路を作成します。スイッチが双方押されたとき、後から押された処理を優先するため各スイッチの立上り微分のリレーを作り、そのリレーを自己保持回路で使用します。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
0.00がONすると1.00がONし続け、0.01がONすると1.00がOFFします。
スイッチが双方押された場合、後から押された処理が優先されます。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(0.00)を押すとランプ(1.00)が点灯し続け、スイッチ(0.01)を押すとランプ(1.00)が消灯します。
スイッチが双方押された場合、後から押された処理が優先されます。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(0.00)を押すと、DIFU命令によりW0.00が1サイクルのみONします。(1行目)
スイッチ(0.01)を押すと、DIFU命令によりW0.01が1サイクルのみONします。(2行目)
W0.00がONすると、1.00がONして自己保持をします。1.00はW0.01がONすることで自己保持がOFFします。(3行目)
W0.00とW0.01はどちらも0.00・0.01がOFF→ONになった瞬間の1サイクルしかONしません。つまり各スイッチを押した瞬間しかW0.00・W0.01がONせず、後からスイッチを押した処理が優先されます。
3.【例題②】立上り微分で1サイクルだけOFF
下記仕様のラダープログラムを立上り微分(DIFU)命令を用いて解説します。
ランプ(1.00)は基本的に点灯していて、スイッチ(0.00)を押した瞬間の1サイクルのみOFFします。(決して実用的な回路ではありません。)
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
0.00がONした瞬間、1.00が1サイクルだけOFFします。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(0.00)を押すと、DIFU命令によりW0.00が1サイクルだけONします。逆に、W0.00のb接点は1サイクルだけOFFするため、コイル1.00の入力条件としています。
4. おわりに
オムロンCJシリーズにおける立上り微分命令について解説しました。
私の場合、立上り微分(DIFU)命令は「スイッチの長押し防止」としてよく使用します。
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
『doda』といった大手求人(転職)サイトには電気・制御設計の求人が数多く紹介されています。※登録は無料です。
「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。