三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける「ワード右シフト」命令とは、ワードデバイスの値を右にシフトするラダープログラム命令です。
ワード右シフト命令を用いることにより、処理を次々と実行する「予約ストック回路」という回路を簡単に作成することができます。
予約ストック回路については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
予約ストック回路で指令を次々と実行するラダープログラム例この記事では、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるワード右シフト命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおいて、ワード右シフト命令は以下のシーケンサ・バージョンで使用することが可能です。
FX3S | :Ver1.00以降 |
FX3G | :Ver1.00以降 |
FX3GC | :Ver1.40以降 |
FX3U | :Ver2.20以降 |
FX3UC | :Ver1.00以降 |
目次
1. ワード右シフト命令の指令方法
ワード右シフト命令には、2種類の指令方法があります。
WSFR | :連続実行形 |
WSFRP | :パルス実行形 |
WSFRは、Word shift rightの略です。
パルス実行形は、入力条件がONしたときの1スキャンのみ実行される命令です。
WSFR:連続実行形(基本の形)
連続実行形のワード右シフト命令は”WSFR”と指令します。
こちらがWSFR命令を使用したラダープログラム例です。
このラダープログラムは、D100を先頭とする8ワードに対して、1ワードずつ右にシフトします。対象の最後であるD107には、D108の値が格納されます。
右にシフトとは、デバイスが老番側から若番側に移動する動作を指します。
「どーゆうことやねん…?」と思うかもしれません。私の文章力不足です。
後ほど解説するラダープログラム例で実際の動作を確認します。
WSFR命令は「連続実行形」であるため、X0がON中は毎スキャン処理が実行されます。入力条件がONしたときの1回のみ処理を行いたい場合、後述するパルス実行形を用いるか、入力条件を1スキャンパルスのものにします。先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で WSFR D108 D100 K8 K1 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。
WSFRP:パルス実行形
パルス実行形のワード右シフト命令は”WSFRP”と指令します。
こちらがWSFRP命令を使用したラダープログラム例です。
連続実行形(WSFR命令)との違いは、入力条件X0がONしたときに1回だけ処理が実行されることです。
2.【例題①】1ワードずつ右シフトする(末尾が0)
下記仕様のラダープログラムをワード右シフト命令を用いて解説します。
入力条件がONするたびに1回だけ処理を実行させるために、パルス実行形を使用します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押すたびに、データレジスタD100~D107(8ワード)のデバイス値が1ワードずつ右にシフトします。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押すたび1回シフトさせるため、パルス実行形であるWSFRP命令を使用します。
作成した命令の各意味のイメージは以下のようになります。
このラダープログラムを実行したときの各デバイスデータは以下のようになります。
このワード右シフト命令ではD100~D107の8ワードを対象としており、命令を実行した後でもD100の値がD99に入ることはありません。そして、指定した末尾のデバイスであるデータレジスタD107には”0”が挿入されています。これは必ず”0”になる訳ではなく、D108の値がD107に入ります。
今回はD108にはデータを格納されておらず”0”が入っていたため、ワード右シフト命令実行後、D107には”0”が格納されました。
3.【例題②】1ワードずつ右シフトする(末尾が0以外)
下記仕様のラダープログラムをワード右シフト命令を用いて解説します。
シフト処理をした後、データレジスタ末尾であるD107にはD110の値を格納する。
【例題①】では、末尾であるD107にはD108のデバイス値が挿入されましたが、今回はD110のデバイス値を挿入します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押すたびに、データレジスタD100~D107(8ワード)のデバイス値が1ワードずつ右にシフトします。(【例題①】と同様)
シフト処理をした後、データレジスタ末尾であるD107にはD110の値が格納されます。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
【例題①】との違いはWSFRP命令で指示しているD108をD110にしたことです。
実は【例題①】もデータレジスタD108に値を格納することで、”0”以外の数値もワード右シフト命令実行後にD107に入れることが可能でした。
4. おわりに
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるワード右シフト命令について解説しました。
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