三菱電機製シーケンサQシリーズにおける「セット」命令とは、入力条件がONすると出力リレー・補助リレーなどのビットデバイスをONするラダープログラム命令です。
逆に「リセット」命令とは、入力条件がONするとビットデバイスをOFFするラダープログラム命令です。カウンタやタイマの値をリセットする(0にする)場合にも用いられます。【例題③】で解説します。
また、セット・リセット命令いずれもデータレジスタ等のワードデバイスのビット指定をすることにより特定のビットをON/OFFすることも可能です。【例題②】で解説します。
この記事では、三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるセット命令とリセット命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサQシリーズにおいて、セット・リセット命令は以下のCPUで使用することが可能です。
Basic | :ベーシックモデルQCPU |
High performance | :ハイパフォーマンスモデルQCPU |
Process | :プロセスCPU |
Redundant | :二重化CPU |
Universal | :ユニバーサルモデルQCPU |
LCPU | :LCPU |
※MELSEC-Lシリーズも含まれていますがご了承ください。
三菱電機製FXシリーズにおけるセット命令とリセット命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【三菱FXシリーズ】セット(SET)・リセット(RST)命令の指令方法とラダープログラム例目次
1. セット命令の指令方法
セット命令には、1種類の指令方法があります。
SET | :セット命令(連続実行形) |
SETは、その名の通り置く・配置する(set)からきています。
こちらがSET命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、入力条件であるX0がONすると、出力リレーY0がONします。その後にX0がOFFしてもY0はONし続けます。
Y0をOFFさせるには、後述するリセット命令等を用いて新たに”0”を書き込む必要があります。
先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上でSET Y0 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。(小文字でもOKです。)
2. リセット命令の指令方法
リセット命令には、1種類の指令方法があります。
RST | :リセット命令(連続実行形) |
RSTは、リセット(reset)の略です。
これはサブルーチンプログラムからの復帰(リターン)に使用する命令で、リセット命令とは関係ありません。
3.【例題①】ビットデバイスをON/OFFする
下記仕様のラダープログラムをセット・リセット命令を用いて解説します。
スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y0)は消灯する。
スイッチ(X0)と(X1)が同時に押された場合、スイッチ(X1)を優先してランプは消灯する。
セット・リセット命令を用いることなく、基本的な自己保持回路でも作成することができますが、今回はセット・リセット命令で作成します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
※使用していないデバイスがありますがご了承ください。
スイッチ(X0)を押すとランプ(Y0)が点灯し続け、スイッチ(X1)を押すと消灯します。
スイッチが同時に押された場合、スイッチ(X1)を優先してランプ(Y0)は消灯します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押すと、SET命令によってY0をONします。
スイッチ(X1)を押すと、RST命令によってY0をOFFします。
同じデバイスにセット・リセット命令を用いた場合、後に指令された命令が優先されます。↑のラダープログラムでは、下側にあるRST命令が優先されます。
4.【例題②】ワードデバイスのビット指定
下記仕様のラダープログラムをセット・リセット命令を用いて解説します。
スイッチ(X1)を押すと、データレジスタD20の4ビット目はOFFする。
スイッチ(X0)と(X1)が同時に押された場合、スイッチ(X1)を優先してデータレジスタD20の4ビット目はOFFする。
【例題①】ではセット・リセット命令の対象が出力リレーY0でした。今回はデータレジスタD20の4ビット目を対象とします。ラダープログラム内でD20の4ビット目は『D20.4』と記述します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押すとデータレジスタD20の4ビット目がONし続け、スイッチ(X1)を押すとOFFします。
【例題①】と同様にスイッチが同時に押された場合、スイッチ(X1)を優先してデータレジスタD20の4ビット目はOFFします。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
【例題①】と同様に「X0でSET」「X1でRST」するラダープログラムです。
データレジスタを始めとするワードデバイスは1点が16ビットで構成され、各ビットを今回のようなビットデバイスのように単独で使用することができます。
この記述方法をワードデバイスのビット指定と呼びます。
5.【例題③】カウンタのリセット
下記仕様のラダープログラムを解説します。
スイッチ(X1)を押すと、ランプを消灯させると共にカウンタの値をリセットさせる。
「3回押すと」の部分でカウンタ(C0)を使用します。カウンタの値をリセットするためにリセット命令を使用します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を3回押すと、カウンタC0がカウンタアップして3回に到達するとランプ(Y0)が点灯します。※カウンタC0の値は右上に表示してあります。
スイッチ(X1)を押すと、ランプを消灯させると共にカウンタC0の値がリセットされます。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(X0)を3回押すと、カウンタC0がONします。カウンタC0がONすることでY0がONします。
スイッチ(X1)を押すとカウンタC0の値がリセットされ、C0自体もOFFになります。
6.【例題④】データレジスタのリセット
下記仕様のラダープログラムをリセット命令を用いて解説します。
データレジスタの値はタッチパネル(GOT)から入力できるものとする。
あまり一般的な使い方ではないかもしれませんが、リセット命令でワードデバイスを指定することにより、格納されている数値をリセットする(0にする)ことができます。
今回はワードデバイス全体(16ビット)をすべてリセットします。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
タッチパネル(GOT)からデータレジスタD0の数値を入力して、スイッチ(X1)を押すと数値がリセットされます。
スイッチ(X1)を押した状態で数値を入力しても、”0”のままになります。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
スイッチ(X1)が押されると、RST命令によってD0の全ビットをOFFします。
データレジスタの各ビットは必ず「0か1のどちらかの状態」になり、PLC内部では2進数のように扱われます。
データレジスタの全ビットを0にすることで、データレジスタに格納される数値が”0”となります。
7. おわりに
三菱電機製シーケンサQシリーズにおけるセット・リセット命令について解説しました。
以下の参考書は、シーケンス制御・ラダープログラムについて詳しく解説しているものです。
本書は私が通っていた短大のシーケンス制御の講義に教科書として使用していました。
シーケンス制御で必要なスキルはリレー回路やラダープログラムを組めることだけではなく、ソレノイドバルブやインダクションモータなどの機器を理解していなければなりません。本書では、それらの機器を実際の機構を交えて解説しています。
ラダープログラムは基礎部分から、一連動作を組むまで解説していますので中級者が読んでも意味がある内容です。