キーエンスKV-Xシリーズにおける「オンディレイタイマ(TON)」は、設定時間経過後にON(TRUE)を出力するファンクションブロックです。
オンディレイタイマとは、入力条件がONしてから設定された時間が経過すると、出力がONするタイマです。
オンディレイタイマ(TON)を用いることにより「スイッチを設定した時間押し続けるとランプが点灯する」プログラムを作ることができます。
この記事では、キーエンスKV-X500/X300シリーズにおけるオンディレイタイマ(TON)の指令方法とラダープログラム、ST言語の例について解説します。
キーエンスKV-X500/X300シリーズでは、オフディレイタイマ(TOF)ファンクションブロックが用意されています。オフディレイタイマ(TOF)ファンクションブロックについては以下のページで解説しております。

目次
1. オンディレイタイマの指令方法
オンディレイタイマ(TON)はLD表現(ラダープログラム)とST表現(ST言語)で使用することができます。

TON_instance(In, PT, Q, ET);
オンディレイタイマ(TON)は↓の引数で構成されています。
引数 | タイプ | データ型 | 初期値 | コメント |
---|---|---|---|---|
In | IN | BOOL | – | タイマ入力 |
PT | IN | TIME | T#0s | 設定時間 |
Q | OUT | BOOL | – | タイマ出力 |
ET | OUT | TIME | – | 経過時間 |
LD表現
↓がLD表現で使用したラダープログラム例です。

このラダープログラムでは、タイマ入力であるInFlag(入力フラグ)がON(TRUE)すると、経過時間であるETが時間とともに増加し、ETが設定時間であるPTに達するとOutFlag(出力フラグ)がON(TRUE)します。
↑のラダープログラムでは、設定時間を3秒に設定しているため、InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)すると、3秒後にOutFlag(出力フラグ)がON(TRUE)します。その後、InFlag(入力フラグ)がOFF(FALSE)すると、同時にOutFlag(出力フラグ)もOFF(FALSE)します。
設定時間、経過時間はTIME型の変数で指令する必要があります。TIME型については後述します。
タイムチャートは以下のようになります。

InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)すると、3秒後にOutFlag(出力フラグ)がON(TRUE)します。
ST表現
↓がST表現で使用したST言語例です。
TON_1(In := InFlag, PT := T#3s, Q => OutFlag);
このSTでは、設定時間を3秒に設定しているため、InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)すると、3秒後にOutFlag(出力フラグ)がON(TRUE)します。その後、InFlag(入力フラグ)がOFF(FALSE)すると、同時にOutFlag(出力フラグ)もOFF(FALSE)します。※前述のLD表現と同じ動作です。
TIME型
TIME型(持続時間型)とは、IEC61131-3準拠のPLCプログラミングで使用される時間を扱うためのデータ型です。
KV-Xシリーズの場合、TIME型は日~ns(ナノ秒)までの時間を下記のように記述することが可能です。
記述形式 | 記述例 |
---|---|
T#{日}d{時}h{分}m{秒}s{ミリ秒}ms{マイクロ秒}µs{ナノ秒}ns | T#1d2h3m10s |
TIME#{日}d{時}h{分}m{秒}s{ミリ秒}ms{マイクロ秒}µs {ナノ秒}ns | TIME#1d2h3m10s |
例として、1分20秒の場合、T#1m20s、またはT#80sと記述します。
2.【例題①】タイマの設定時間を変更する
下記仕様のラダープログラム、STをオンディレイタイマ(TON)を用いて解説します。
スイッチ緑を放すと同時にランプ緑が消灯する。
設定時間はタッチパネルのData00からms単位で設定できるようにする。
スイッチ緑押下からランプ緑点灯までの遅延にオンディレイタイマ(TON)を使用します。
タッチパネルでTIME型の変数を定義することが出来ないため、DINT→TIME型に変換する必要があります。今回はms単位で設定時間を指定するため、MilliSecToTime(ミリ秒→時間変換)ファンクションを使用します。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

※撮影環境の都合で実際の時間に対して少し遅延しています。
スイッチ緑を押すと設定時間後にランプ緑が点灯します。スイッチ緑を放すと同時にランプ緑が消灯します。
タッチパネルのData00からms単位で設定できるようにしています。Data00はDINT型で↓のような設定になっています。

使用する変数
使用する変数は以下になります。
変数 | データ型 | コメント |
---|---|---|
TON_1 | TON | FBインスタンス |
SwGreen | BOOL | スイッチ緑 |
LpGreen | BOOL | ランプ緑 |
Data00 | DINT | データ00(設定時間の設定) |
Data00Time | TIME | データ00TIME型 |
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。

MilliSecToTime(ミリ秒→時間変換)ファンクションで、DINT型のData00(ms)をTIME型のData00Timeに変換します。(1行目)
タイマ入力にスイッチ緑、タイマ出力にランプ緑、設定時間にTIME型であるData00Timeを指定したオンディレイタイマ(TON)で、スイッチ緑を押すと設定時間後にランプ緑が点灯します。(2行目)
ST言語
ST言語は下記のようになります。
//DINT型のData00(ms)をTIME型のData00Timeに変換
Data00Time := MilliSecToTime(In := Data00);
//スイッチ緑押下でData00Time時間後にランプ緑点灯
TON_1(In := SwGreen, PT := Data00Time, Q => LpGreen);
3.【例題②】タイマの経過時間をモニタする
下記仕様のラダープログラム、STをオンディレイタイマ(TON)を用いて解説します。
スイッチ緑を放すと同時にランプ緑が消灯する。
設定時間はタッチパネルのData00からms単位で設定できるようにする。
経過時間はタッチパネルのData01でms単位でモニタできるようにする。
【例題①】に対して、経過時間のモニタ(Data01)を追加します。
タッチパネルでTIME型の変数を定義することが出来ないため、TIME→DINT型に変換する必要があります。(【例題①】とは逆)
今回はms単位で経過時間をモニタするため、TimeToMilliSec(時間→ミリ秒変換)ファンクションを使用します。
タッチパネルの動作イメージ
タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

※撮影環境の都合で実際の時間に対して少し遅延しています。
スイッチ緑を押すと設定時間後にランプ緑が点灯します。スイッチ緑を放すと同時にランプ緑が消灯します。
タッチパネルのData00からms単位で設定、Data01でms単位でモニタできるようにしています。Data00、Data01はDINT型で↓のような設定になっています。

使用する変数
使用する変数は以下になります。
変数 | データ型 | コメント |
---|---|---|
TON_1 | TON | FBインスタンス |
SwGreen | BOOL | スイッチ緑 |
LpGreen | BOOL | ランプ緑 |
Data00 | DINT | データ00(設定時間の設定) |
Data01 | DINT | データ01(経過時間の表示) |
Data00Time | TIME | データ00TIME型 |
Data01Time | TIME | データ01TIME型 |
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。

MilliSecToTime(ミリ秒→時間変換)ファンクションで、DINT型のData00(ms)をTIME型のData00Timeに変換します。(1行目)
タイマ入力にスイッチ緑、タイマ出力にランプ緑、設定時間にTIME型であるData00Time、経過時間にTIME型であるData01Timeを指定したオンディレイタイマ(TON)で、スイッチ緑を押すと設定時間後にランプ緑が点灯します。(2行目)
TimeToMilliSec(時間→ミリ秒変換)ファンクションで、TIME型のData01TimeをDINT型のData01(ms)に変換します。(3行目)
ST言語
ST言語は下記のようになります。
//DINT型のData00(ms)をTIME型のData00Timeに変換
Data00Time := MilliSecToTime(In := Data00);
//スイッチ緑押下でData00Time時間後にランプ緑点灯
TON_1(In := SwGreen, PT := Data00Time, Q => LpGreen, ET => Data01Time);
//TIME型のData01TimeをDINT型のData01(ms)に変換
Data01 := TimeToMilliSec(In := Data01Time);
4. おわりに
キーエンスKV-X500/X300シリーズにおけるオンディレイタイマ(TON)について解説しました。
電気ハード設計、PLC/TPソフト設計、ロボットティーチング、制御盤製作の外注業務は、ぜひ永工舎にご相談ください。

当サイトを運営している電気設計人は、個人で永工舎として外注業務をお請けしております。
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。