【ラダー基礎】ラダープログラムとは?|記号や回路例を交えて解説

00_【ラダープログラム基礎】ラダープログラムとは?|記号や回路例を交えて解説

ラダープログラム(Ladder Program)とは、主にPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)を制御するプログラミング言語の1つです。

PLCとは、工場設備産業機械の制御に使われる他、信号機、エレベータ、テーマパークのアトラクション等、身近な機械で頻繁に使用されています。

PLCを制御するためのプログラム言語はIEC61131-3により5種類が定義されており、ラダープログラムはその中の1つで、2024年時点で日本国内で最も普及している言語です。

この記事では、ラダープログラムとはどのようなプログラミング言語なのか?概要を解説します。少しでもラダープログラムについてイメージを膨らませて頂くことができれば幸いです。

メモ
ラダープログラムは別名「ラダー・ダイアグラム」や「ラダー・ロジック」「ラダー図」など色々な呼び方が存在しています。

1. ラダープログラムとは?

ラダー(Ladder)とは、直訳すると梯子(はしご)という意味です。ラダープログラムはリレー回路をベースに考案されたプログラム言語で梯子のような見た目をしています。

10_ラダープログラムは梯子のような見た目

従来、自動化システムはリレー回路と呼ばれるリレー(電磁石で動作するスイッチ)やタイマリレー(時間差で動作するリレー)を数個~数千個用いて制御されていました。

リレー回路の場合、動作変更や追加機能を組み込むためには、配線の変更やリレー部品の追加が必要になり、作業に大きな手間と時間が掛かります。

また、リレーが接点の溶着や接触不良を起こした場合、回路全体を見直さなければならない可能性もあり、トラブルシューティングにも大きな労力が必要になります。

ラダープログラムはリレー回路と比較して、動作変更や追加機能の組み込みが容易で、サーボモータやアナログ入出力、ネットワーク接続等の複雑な制御にも対応することが可能です。

リレー回路とラダープログラムの比較

実際のリレー回路とラダープログラムを比較します。

↓がリレー回路です。

11_フリッカー回路(リレー)

↓がラダープログラムです。(三菱電機製:GX Works3で作成)

12_フリッカー回路(ラダープログラム)

どちらもスイッチ(緑)を押している間、ランプ(赤)が点滅(点灯0.6秒、消灯0.4秒)する回路です。この回路をフリッカー回路と呼びます。

個々の記号は異なりますが、左右に縦線があり、横線で各記号を接続しており似た見た目をしている事が分かるかと思います。

スイッチ(緑)とランプ(赤)の他に、リレー回路の場合はタイマリレー2ヶが必要になり、ラダープログラムの場合はPLCが必要になります。※別途、電源や電線はどちらの場合も必要になります。

ラダープログラムのメリット

ラダープログラムは梯子のような見た目から、エンジニアが直観的に理解し易く、従来のリレー回路に慣れている人にとっては馴染みが深い形状をしています。

また、特に日本国内における工場設備や自動機の大半はラダープログラムが使用されており、他の言語に比べて使用する頻度が非常に高いです。

ラダープログラムのデメリット

リレー回路に比べるとデメリットは少ないですが、上記のような「ランプ点滅させるだけ」のようなシステムの場合、部材の費用が高額になります。タイマリレーは数千円程度で購入できるものが大半ですが、PLCは安価なものでも数万円はします。

プログラミング言語(CやPython)に比べると、複雑な算出演算の実装には不向きです。ラダープログラムでは四則演算をはじめとする算出命令が使用できますが、演算が複雑になるほどプログラムは縦に長くなり可読性が低下します。

ラダープログラムはPLCのメーカによって命令の内容が異なる場合があり、内部で使用するデバイスも基本的にメーカ毎に異なります。エンジニアによっては「A社は使えるけど、B社は使えない」ケースがあります。また、ラダープログラムを作成するソフトウェアはPLCを販売しているメーカから有償で購入する必要があり、敷居が高いと言えます。

2. ラダープログラムの記号

先ほどのフリッカー回路のラダープログラムを用いて記号を解説します。記号はPLCのメーカによって異なる場合がありますが、今回は三菱電機製のソフトウェアGX Works3を用いて解説します。

a接点

a接点は特定の条件が成立した時にONする接点です。↓の場合、PLCのX0端子に接続されたスイッチ(緑)を押すと、デバイスX0のa接点がONします。

20_a接点

b接点

b接点は、a接点とは逆に特定の条件が成立した時にOFFする接点です。

21_b接点

OUTコイル

OUTコイルは、コイルより左側の条件が全て成立するとONします。コイルはラダープログラム内で「外部への出力」や「一時的な記憶」をすることができます。↓の場合、デバイスY0のコイルがONするとPLCのY0端子に接続されたランプ(赤)が点灯します。

22_コイル

タイマのコイル

一般的なOUTコイルは条件が成立した時点でONしますが、タイマのコイルは設定した時間が継続して成立した時点でONします。タイマには積算タイマや設定時間が1msの高速タイマ等の種類があります。

23_タイマのコイル

PLCのメーカによってはタイマのコイルもOUTコイルと同様な見た目の場合もあります。

命令

ラダープログラムには接点やコイルの他に各種命令があります。↓はEND命令と呼ばれ、ラダープログラム末尾に指令することでラダープログラムの処理を先頭に戻す役割があります。PLCメーカによって命令の種類は異なりますが、算出演算や特殊ユニット専用の命令等、様々な命令が用意されています。

24_命令

3. ラダープログラムの例

ラダープログラムの基本回路を2ヶ紹介します。

自己保持回路

自己保持回路とは、入力条件がONすると出力がONして、その後に入力条件がOFFしても出力がONし続ける(ONを保持する)ラダープログラムです。

自己保持回路を用いることで「スイッチを1回押すと、ランプが点灯し続ける」回路を作成することができます。

↓が自己保持回路のラダープログラム例です。

30_自己保持回路

スイッチ(緑)を押すと、X0のa接点がONしてコイルY0がONします。コイルY0がONしたことにより、Y0自身のa接点がONします。Y0のa接点がONすることによりコイルY0はONし続けます。

このままだとコイルY0をOFFさせる条件が無いためランプが消灯しません。そこでX1のb接点を用いてY0のコイルをOFFさせます。スイッチ(黄)を押すことによりX1のb接点がOFFしてコイルY0がOFFします。

メモ
b接点は「a接点の逆の動きをする」と考えるとイメージし易いかと思います。

オンディレイタイマ回路

オンディレイタイマ回路とは、タイマの入力条件がONしてから、一定時間後に出力がONする回路です。

オンディレイタイマ回路を用いることで「スイッチを一定時間押した後にランプが点灯する」回路を作成することができます。

31_オンディレイタイマ回路

スイッチ(緑)を押すと、コイルT0の条件が成立します。T0はタイマと呼ばれ、ここでは条件が1秒間継続してONし続けるとT0がONします。T0がONすることによりT0のa接点がONしてコイルY0がONします。

4. 各社の開発ソフトウェア

ラダープログラムを作成してPLCに書き込みを行ったり、PLCのデータをモニタ、読み出し等を行うソフトを開発ソフトウェアと呼ぶことが多いです。

基本的に開発ソフトウェアはPLCを販売しているメーカから購入する必要があり、PLCに適したものを使用する必要があります。稀に「PLCを購入すればソフトも無償で付ける」という話も聞きますが、私は経験がありません。

今回は私が現場でよく使用する開発ソフトウェアを3ヶ紹介します。

注意
使用するPLCの頻度は業界や企業によって大きく異なります。正確にシェアを調べた訳ではない為、下記メーカはあくまで「電気設計人がよく目にする」程度に捉えてください。

三菱電機:GX Works3

40_GX Works3
出典:三菱電機株式会社

キーエンス:KV STUDIO

41_KV STUDIO
出典:株式会社キーエンス

オムロン:CX Programmer

42_CX Programmer
出典:オムロン株式会社

手配する商社や代理店により異なりますが、数万円~二十万円程度の開発ソフトウェアが多い印象です。気軽に手を出せる金額ではない事から「保有している開発ソフトウェアで使用できるPLCを選定する」状況が生まれます。

ラダープログラムのエンジニアも、「このソフトは持っていないから請ける事が出来ない」話もよく耳にします。

5. おわりに

ラダープログラムがどのようなプログラムなのか?概要を解説しました。

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以下の参考書は、シーケンス制御について易しく解説しているものです。

シーケンス制御とは?から始まり身近な使用例や世の中のどのようなところに活用されているか、専門的な用語をほとんど使用することなく解説しています。

見やすいイラストが充実しており、スラスラと読めると思います。

本書の後半では三菱電機製のシーケンサを用いて簡単なラダープログラムについても解説しています。

シーケンス制御の全くの初心者に是非オススメしたい参考書です。

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