三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズにおける「否定転送」命令とは、16/32ビットデータの各ビットの状態を反転して他のデバイスに転送するラダープログラム命令です。
否定転送命令を用いることにより「データレジスタの各ビットを反転するプログラム」や「内部リレーのON/OFFをまとめて反転するプログラム」を作ることができます。
この記事では、三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズにおける否定転送命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズにおいて、否定転送命令は以下のCPUで使用することが可能です。
| FX5UJ | ：使用可 |
| FX5U | ：使用可 |
| FX5UC | ：使用可 |
目次
1. 否定転送命令の指令方法
否定転送命令には、4種類の指令方法があります。
| CML | ：16ビット連続実行形 |
| CMLP | ：16ビットパルス実行形 |
| DCML | ：32ビット連続実行形 |
| DCMLP | ：32ビットパルス実行形 |
CMLは、補足するもの・補足体(Complement)の略です。
パルス実行形は、入力条件がONしたときの1スキャンのみ実行される命令です。
CML：16ビット連続実行形（基本の形）
16ビット連続実行形の否定転送命令は”CML”と指令します。
こちらがCML命令のラダープログラム例です。
このラダープログラムは、X0がONしている間、データレジスタD0の各ビットを反転した結果をD10に転送します。
例えば、このラダープログラムで「事前にD0に定数-3930を格納」して否定転送命令を実行すると、D10のデバイス値は以下のようになります。
データレジスタD0の各ビットのON/OFF状態を反転させた結果である「3929」がD10に転送されます。
先ほどのラダープログラムはGX Works3の回路上で『CML D0 D10』と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。(小文字でもOKです。)
CMLP：16ビットパルス実行形
16ビットパルス実行形の否定転送命令は”CMLP”と指令します。
こちらがCMLP命令のラダープログラム例です。
連続実行形(CML命令)との違いは「入力条件であるX0がOFF→ONになった瞬間(スキャン)に1回だけ否定転送命令が実行される」ことです。
X0がON中にデータレジスタD0の値が変化しても、D10は追従して変化しません。
DCML・DCMLP：32ビット実行形
32ビット連続実行形の否定転送命令は”DCML”と指令します。
32ビットパルス実行形の否定転送命令は”DCMLP”と指令します。
こちらがDCML・DCMLP命令を使用したラダープログラム例です。
32ビット実行形の場合、転送元、転送先はどちらも2ワード(32ビット)長として扱われます。
このラダープログラムは、X0がONするとデータレジスタD0,D1のデバイス値の反転した結果をD10,D11に転送します。
2.【例題①】1ワード長のデバイス値を否定転送する
下記仕様のラダープログラムを否定転送命令を用いて解説します。
データレジスタはそれぞれ1ワード長のため、16ビット実行形を使用します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押している間、データレジスタD0の各ビットの反転した結果をD2に転送します。
スイッチ(X0)を押している間にD0のデバイス値が変化すると、D2のデバイス値が追従して変化します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
「データレジスタD0の各ビットの反転した結果をD2に転送」に16ビット実行形のCML命令を使用します。
3.【例題②】2ワード長のデバイス値を否定転送する
下記仕様のラダープログラムを否定転送命令を用いて解説します。
データレジスタは全て2ワード長として扱う。
データレジスタは2ワード長として扱うため、32ビット実行形を使用します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
スイッチ(X0)を押している間、データレジスタD0,D1の各ビットの反転した結果をD2,D3に転送します。
スイッチ(X0)を押している間にD0,D1のデバイス値が変化すると、D2,D3のデバイス値が追従して変化します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
「データレジスタD0,D1の各ビットの反転した結果をD2,D3に転送」に32ビット実行形のDCML命令を使用します。
データレジスタは2ワード長として扱うため、32ビット実行形であるDCML命令を使用します。
4. おわりに
三菱電機製シーケンサiQ-Fシリーズにおける否定転送命令について解説しました。
電気ハード設計、PLC/TPソフト設計、ロボットティーチング、制御盤製作の外注業務は、ぜひ永工舎にご相談ください。
当サイトを運営している電気設計人は、個人で永工舎として外注業務をお請けしております。
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
