デバイス値の変化を検出するラダープログラム例

00_デバイス値の変化を検出するラダープログラム例

装置を制御するラダープログラムを作成すると、入力リレーや出力リレーなどのビットデバイスとは異なる「ワードデバイス」と呼ばれるものを使用する場合が多々あります。

ワードデバイスは、三菱電機製シーケンサではデータレジスタやRレジスタなどに相当して、GOTから値を入力したり、ラダープログラム内部で記憶したりと色々な部分で使用します。

このワードデバイスの「値」が何らかの理由で変化したとき、ランプやメッセージ等で注意を促さなければならない場合があります。

この記事では、デバイス値の変化を検出してランプを点灯させるラダープログラム例を解説します。

この記事中のラダープログラムはGX Works2で作成しており、プロジェクトのPCシリーズはFXCPU、PCタイプはFX3G/FX3GCに設定してあります。

1. 作成したラダープログラムとGOTの仕様説明

作成したラダープログラムとGOTの仕様や説明を解説します。

仕様

仕様は以下のようになります。

仕様
データレジスタ(D0)の値が変化したとき、ランプ(Y0)を2秒間点灯させる。

データレジスタ(D0)の値を監視して、変化したときにランプ(Y0)で注意喚起するラダープログラムです。

タイムチャート

タイムチャートは以下のようになります。

D0の値が変化したとき、値の内容に関わらずY0が2秒間ONします。

GOTの動作イメージ

GOTの動作イメージは以下のようになります。

GOTでデータレジスタ(D0)の値を変化させたとき、ランプ(Y0)が2秒間点灯します。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

解説は次項で行います。

注意
解答のラダープログラムはあくまで一例です。
別のプログラムでも動作が同じであれば問題ありません。

2. ラダープログラムの解説(3分割)

先ほどのラダープログラムを3ヶに分けて解説をします。

① データレジスタ(D0)の変化を検知

上のラダープログラムの「①水色枠」の部分です。

接点形比較命令を用いて、データレジスタ(D0)と(D10)の値を比較します。(D10については後ほど解説します。)

[<> D0 D10] はデータレジスタ(D0)と(D10)の値が不一致のときに補助リレー(M1)がONします。

接点形比較命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_【三菱FXシリーズ】接点形比較命令の指令方法とラダープログラム例 【三菱FXシリーズ】接点形比較命令の指令方法とラダープログラム例

② データレジスタ(D0)の値を(D10)に転送

上のラダープログラムの「②オレンジ色枠」の部分です。

転送命令(MOV命令)を用いてデータレジスタ(D0)の値を(D10)に転送しています。

M8000とは、三菱電機製FXシリーズの特殊デバイス「PLCがRUN中は常時ONする」接点です。

つまりこのラダープログラムは常時、データレジスタ(D0)の値を(D10)に転送し続けていることになります。

「あれ?それだと①の接点形比較命令で不一致にならなくね?」と思うかもしれませんが、ラダープログラムは上から順に処理を行うため、D0の値が変化したときのみ不一致が生じます。(少しわかりにくいかもしれません…)

転送命令については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_【三菱FXシリーズ】転送(MOV)命令の指令方法とラダープログラム例 【三菱FXシリーズ】転送(MOV)命令の指令方法とラダープログラム例

③ ランプ(Y0)を2秒間点灯

上のラダープログラムの「③紫枠」の部分です。

データレジスタ(D0)が変化したとき、補助リレー(M1)が1スキャンのみONするので、M1を入力条件とするY0の自己保持回路を作ります。

Y0の自己保持回路をOFFする条件は「Y0がONしてから2秒後にONするタイマ(T0)」です。

これにより、データレジスタ(D0)の値が変化したとき、ランプ(Y0)を2秒間点灯させる回路が完成します。

タイマについては以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_タイマ(T)の概要と使用例 【ラダープログラム】タイマ(T)の使い方と例題

3. 応用したGOTとラダープログラム

少しですが、先ほど解説したGOTとラダープログラムを応用します。

仕様

応用の仕様は以下のようになります。

仕様
データレジスタ(D0)の値が変化したとき、ランプ(Y0)を2秒間点灯させるとともにGOTにメッセージ「D0の値が変化しました」を表示する。

GOTに表示するメッセージを追加しました。

GOTの動作イメージ

GOTの動作イメージは以下のようになります。

GOT左下部にメッセージが追加しています。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

下部の2行が追加してあります。Y0は「D0の値が変化したときに2秒間ONするデバイス」のため、Y0がONしているときにメッセージ【D0の値が変化しました】と表示するようにします。

GOTのメッセージはコメント機能を用いており、D100が定数1のとき【メッセージはありません】と表示して、D100が定数2のとき【D0の値が変化しました】と表示します。

4. おわりに

デバイス値の変化を検出するラダープログラム例を解説しました。

このラダープログラムに名称を付けるのであれば「変化検出回路」がいいかなぁと思います。

以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。

ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。

各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。

ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。

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