「タイマ」命令とは、キーエンスKVシリーズにおける設定した時間、実行条件がONし続けるとコイルがONするラダープログラム命令です。
コイルがONする設定時間の指定方法には複数の種類が存在し、命令により設定値の単位が異なります。
この記事では、キーエンスKVシリーズにおけるタイマ命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
設定値の単位は複数ありますが、ここでは100ms・10ms・1msを対象とします。※ms(ミリセカンド)は1000分の1秒です。
目次
1. タイマ命令の指令方法
ここでは、以下のタイマ命令3種類について解説します。
- TMR:100msタイマ
- TMH:高速10msタイマ
- TMS:高速1msタイマ
その他、TMU:高速10μm(マイクロセカンド)タイマがありますが、この記事では割愛します。
TMR:100msタイマ
100msタイマ命令は”TMR”と指令します。
こちらがTMR命令を使用したラダープログラム例です。
※タイマ命令に”TMR”と表記されていませんが問題ありません。
このラダープログラムでは、実行条件である入力リレーR000が5秒間連続してONするとタイマT0がONします。
タイムチャートは以下のようになります。
実行条件の入力リレーR000が5秒間ONし続けると、タイマT0がONします。その後、入力リレーR000がOFFすると直ちにタイマT0がOFFします。
入力リレーR000がONしている時間が5秒に満たない場合、タイマT0はONしません。
実行条件がONしてからタイマがONするまでの時間は5秒でしたが、これがタイマがONする時間となります。上のラダープログラムでは設定値を#50と指定していました。
今回はTMR:タイマ(動作単位100ms)ですので、設定値 × 100ms = タイマがONする時間となります。
この設定値は0~4294967295の範囲で設定します。
先ほどのラダープログラムは、KV STUDIOの回路上でTMR T0 #50と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。
TMH:高速10msタイマ
高速10msタイマ命令は”TMH”と指令します。
こちらがTMH命令を使用したラダープログラム例です。
今回も命令文である”TMH”は表記されていませんが問題ありません。
TMH:高速10msタイマ命令の場合、命令文に”H”と表記されます。
このラダープログラムでも設定値は先ほどと同様に#50ですが、命令文がTMH:高速10msタイマ命令になるので、実行条件がONしてからタイマがONするまでの時間は#50 × 10ms = 500ms(0.5秒)となります。
先ほどのラダープログラムは、KV STUDIOの回路上でTMH T0 #50と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。
TMS:高速1msタイマ
高速1msタイマ命令は”TMS”と指令します。
こちらがTMS命令を使用したラダープログラム例です。
今回も命令文である”TMS”は表記されていませんが問題ありません。
TMS:高速1msタイマ命令の場合、命令文に”S”と表記されます。
今回の命令文はTMS:高速1msタイマ命令になるので、実行条件がONしてからタイマがONするまでの時間は#50 × 1ms = 50ms(0.05秒)となります。
先ほどのラダープログラムは、KV STUDIOの回路上でTMS T0 #50と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。
2.【例題①】3種類のタイマを使用する①
下記仕様のラダープログラムを先ほどのタイマ命令3ヶを用いて作成します。
タイマT0⇒0.05秒後 (TMS:高速1msタイマ命令を使用)
タイマT1⇒0.5秒後 (TMH:高速10msタイマ命令を使用)
タイマT2⇒5秒後 (TMR:100msタイマ命令を使用)
各々のタイマには、()内の指定された命令を使用します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
タイマT0は、TMS:高速1msタイマ命令に設定値を#50と指定することにより#50 × 1ms = 50ms(0.05秒)のタイマとしています。
タイマT1は、TMH:高速10msタイマ命令に設定値を#50と指定することにより#50 × 10ms = 500ms(0.5秒)のタイマとしています。
タイマT2は、TMR:100msタイマ命令に設定値を#50と指定することにより#50 × 100ms = 5000ms(5秒)のタイマとしています。
このように、設定値が一定であってもタイマの命令文によりタイマがONする時間は大きく異なります。
シミュレータの動作
シミュレータを実行している様子は以下のようになります。
各デバイスは、黄緑色に塗りつぶされるとONになっている状態です。
タイマは赤字が設定値で、黒字が現在カウントしている時間となります。カウント時間”0”になるとタイマはONします。
各々のタイマは実行条件である入力リレーR000がONしてから所定の時間後にONします。
入力リレーR000がONしてからタイマT0は0.05秒でONするので感覚的には一瞬です。
3.【例題②】3種類のタイマを使用する②
下記仕様のラダープログラムを先ほどのタイマ命令3ヶを用いて作成します。
タイマT0 (TMS:高速1msタイマ命令を使用)
タイマT1 (TMH:高速10msタイマ命令を使用)
タイマT2 (TMR:100msタイマ命令を使用)
【例題①】では、各タイマの設定値が同じでタイマ命令の種類が異なることから、タイマがONする時間が各々違いました。
今回の【例題②】では、タイマがONする時間が同じでタイマ命令の種類が異なることから、各タイマの設定値が違くなります。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
タイマT0は、TMS:高速1msタイマ命令に設定値を#3000と指定することにより#3000 × 1ms = 3000ms(3秒)のタイマとしています。
タイマT1は、TMH:高速10msタイマ命令に設定値を#300と指定することにより#300 × 10ms = 3000ms(3秒)のタイマとしています。
タイマT2は、TMR:100msタイマ命令に設定値を#30と指定することにより#30 × 100ms = 3000ms(3秒)のタイマとしています。
結果としてすべてのタイマが入力リレーR000がONした3秒後にONします。
シミュレータの動作
シミュレータを実行している様子は以下のようになります。
各デバイスは、黄緑色に塗りつぶされるとONになっている状態です。
タイマは赤字が設定値で、黒字が現在カウントしている時間となります。カウント時間”0”になるとタイマはONします。
入力リレーR000がONすると、すべてのタイマが3秒後にONします。
4. おわりに
キーエンスKVシリーズにおけるタイマ(TMR・TMH・TMS)命令について解説しました。
ラダープログラムにおいてタイマは必須と言えるものです。
以下の参考書はラダープログラムの色々な「定石」が記載されており、実務で使用できるノウハウが多く解説されています。私がラダープログラムの参考書として自信をもってオススメできるものです。
ただし、ラダープログラムやPLCといった電気・制御設計は参考書やWebサイトのみでの学習には必ずどこかで限界が来ます。
各メーカが販売しているPLCやプログラム作成のアプリケーションを揃えるには安くても十万円以上の大きな費用が掛かり、独学は現実的ではありません。
ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。
『doda』といった大手求人(転職)サイトには電気・制御設計の求人が数多く紹介されています。※登録は無料です。
「スキルこそ今後のキャリアを安定させる最も大切な材料」と考える私にとって電気・制御設計はとても良い職業だと思います。キャリアの参考になれば幸いです。
電気設計人様
突然失礼します。
yenqooと申します。
キーエンス関連の記事読みました。
お願いといいますか。。。記事の内容で、
単純なコマンドの使用例のみならず
応用も記載して欲しいと思います。(読者の皆様のためにも)
例えば立石PLCの作例「【ノウハウ初級】オフディレイタイマ回路のラダープログラム例【オムロンCJ】」
などの様に。
また。この中で解説している、タイマ設定値の変更方法なども記載して頂くと良いと思います。
(DMなどのアドレス指定/レジスタからの代入/定数指定)
(タイマの現在値や設定値の読出しなどもあるといいですね。)
■それと、余談ですがOff Delay ロジックにはLatch を使わない方法も有ります。
参考に。
http://yenqoo.com/spices/
の左メニュー
「基本編」>積分(タイマー)>OFF遅延 をご覧ください。
キーエンスに特化した情報を発信しています。
■ できる男のPLC講座「PLCのスパイス」
お姉さまも大歓迎!
http://yenqoo.com/spices/
yenqoo様
アドバイスありがとうございます。
タイマの使用例に関しては、別記事で解説したいと思います。
設定値の読出し等、用途に応じた様々な使用例も解説できればと思います。