【キーエンスKV-X】転送(MOVE)FUNの指令方法とラダープログラム/ST例

00_【キーエンスKV-X】転送(MOVE)FUNの指令方法とラダープログラムST例

キーエンスKV-Xシリーズにおける「転送(MOVE)FUN」は、転送元の値を転送先に転送するファンクションです。

転送(MOVE)FUNを用いることにより「変数に定数を格納するプログラム」や「変数の値を他の変数に転送するプログラム」を作ることができます。

この記事では、キーエンスKV-X500/X300シリーズにおける転送(MOVE)FUNの指令方法ラダープログラム、ST言語の例について解説します。

注意
この記事中のラダープログラムはKV STUDIO Ver.12で作成しており、対応機種はKV-X500に設定してあります。

1. 転送FUNの指令方法

転送(MOVE)FUNはLD表現(ラダープログラム)とST表現(ST言語)で使用することができます。

10_LD表現
ラダープログラム
ST言語
Dst := Src;

転送(MOVE)FUNは↓の引数で構成されています。

引数タイプデータ型初期値コメント
ENINBOOLイネーブル入力
ENOOUTBOOLイネーブル出力
SrcIN転送元
DstOut転送先

LD表現

↓がLD表現で使用したラダープログラム例です。

11_LD使用例
メモ
転送(MOVE)はFUN(ファンクション)のため、インスタンス名を指令する必要はありません。

このラダープログラムでは、InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)している間、InData(入力データ)の値をOutData(出力データ)に転送します。

InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)中にInData(入力データ)の値が変化すると、OutData(出力データ)の値も追従して変化します。

InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)した瞬間のみInData(入力データ)の値をOutData(出力データ)に転送する場合、「InFlag(入力フラグ)を立ち上がり検出(R_TRIG)ファンクションブロック等で微分化する」または「転送(MOVE)FUNを微分指定する」方法があります。

立ち上がり検出(R_TRIG)ファンクションブロックについては以下のページで解説しております。

00_【キーエンスKV-X】立ち上がり検出(R_TRIG)FBの指令方法とラダープログラムST例 【キーエンスKV-X】立ち上がり検出(R_TRIG)FBの指令方法とラダープログラム/ST例

微分指定する場合、命令の引数設定ダイアログで微分(E)にチェックを入れます。

10-1_微分指定

ST表現

↓がST表現で使用したST言語例です。

ST言語
IF InData THEN
	OutData := InData;
END_IF;

このSTでは、InFlag(入力フラグ)がON(TRUE)している間、InData(入力データ)の値をOutData(出力データ)に転送します。※前述のLD表現と同じ動作です。

注意事項

転送元(Src)と転送先(Dst)のデータ型がINT/UINT/DINT/UDINT/REAL/LREALのいずれかで、転送元(Src)と転送先(Dst)のデータ型が異なる場合、転送元(Src)の値は転送先(Dst)の型に変換されてから転送されます。

転送元(Src)に配列全体、配列の1要素、構造体全体、構造体の1メンバを指定した場合は、↓のように処理します。

転送元(Src)処理内容
配列全体配列のすべての要素を転送
配列の1要素その要素だけを転送
構造体全体構造体のすべてのメンバを転送
構造体の1メンバそのメンバだけを転送

2.【例題①】変数に定数を転送

下記仕様のラダープログラム、STを転送(MOVE)FUNを用いて解説します。

仕様
スイッチ緑を押すと、変数Data00に定数5を転送する。
スイッチ黄を押すと、変数Data00に定数0を転送する。
スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理を適用する。

Data00にスイッチに応じた定数の転送に転送(MOVE)FUNを使用します。

タッチパネルの動作イメージ

タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

例題①_タッチパネルイメージ

スイッチ緑を押すと変数Data00に定数5を転送します。スイッチ黄を押すと変数Data00に定数0を転送します。

スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理が適用されます。

使用する変数

使用する変数は以下になります。

変数データ型コメント
R_TRIG1R_TRIGFBインスタンス
R_TRIG2R_TRIGFBインスタンス
SwGreenBOOLスイッチ緑
SwYellowBOOLスイッチ黄
Data00UINTデータ00

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題①_ラダープログラム

立ち上がり検出(R_TRIG)を使用することにより、各スイッチの立ち上がり(FALSE→TRUE)を検出した時のみ転送(MOVE)FUNが実行されます。

転送(MOVE)FUNの転送元に各スイッチに応じた定数をUINT型(1ワード符号なし整数)で指定することで、UINT型の変数Data00に1ワード符号なし整数の値が転送されます。

立ち上がり検出(R_TRIG)ファンクションブロックについては以下のページで解説しております。

00_【キーエンスKV-X】立ち上がり検出(R_TRIG)FBの指令方法とラダープログラムST例 【キーエンスKV-X】立ち上がり検出(R_TRIG)FBの指令方法とラダープログラム/ST例

ST言語

ST言語は以下のようになります。

ST言語
//スイッチの立ち上がり検出
R_TRIG1(CLK := SwGreen);
R_TRIG2(CLK := SwYellow);

//スイッチ緑の立ち上がりでData00に定数5を転送
IF R_TRIG1.Q THEN
	Data00 := 5;
END_IF;

//スイッチ黄の立ち上がりでData00に定数0を転送
IF R_TRIG2.Q THEN
	Data00 := 0;
END_IF;

3.【例題②】配列型変数の転送

下記仕様のラダープログラム、STを転送(MOVE)FUNを用いて解説します。

仕様
スイッチ緑を押すと、配列型変数Ary00の値をAry01に転送する。
スイッチ黄を押すと、配列型変数Ary01の値をAry00に転送する。
スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理を適用する。
配列型変数はいずれも一次元配列、要素は[0]~[4]の要素数5とする。

転送(MOVE)FUNの転送元と転送先に配列型変数(全体)を指定します。

タッチパネルの動作イメージ

タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

例題①_タッチパネルイメージ

スイッチ緑を押すと配列型変数Ary00の値をAry01に転送します。スイッチ黄を押すと配列型変数Ary01の値をAry00に転送します。

スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理が適用されます。

使用する変数

使用する変数は以下になります。

変数データ型コメント
R_TRIG1R_TRIGFBインスタンス
R_TRIG2R_TRIGFBインスタンス
SwGreenBOOLスイッチ緑
SwYellowBOOLスイッチ黄
Ary00ARRAY[0..4] OF UINT配列00
Ary01ARRAY[0..4] OF UINT配列01

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題②_ラダープログラム

立ち上がり検出(R_TRIG)を使用することにより、各スイッチの立ち上がり(FALSE→TRUE)を検出した時のみ転送(MOVE)FUNが実行されます。※【例題①】と同様

転送(MOVE)FUNの転送元と転送先に配列型変数(全体)を指定することにより、配列のすべての要素が転送されます。

ST言語

ST言語は以下のようになります。

ST言語
//スイッチの立ち上がり検出
R_TRIG1(CLK := SwGreen);
R_TRIG2(CLK := SwYellow);

//スイッチ緑の立ち上がりでAry01にAry00を転送
IF R_TRIG1.Q THEN
	Ary01 := Ary00;
END_IF;

//スイッチ黄の立ち上がりでAry00にAry01を転送
IF R_TRIG2.Q THEN
	Ary00 := Ary01;
END_IF;

4.【例題③】構造体型変数の転送

下記仕様のラダープログラム、STを転送(MOVE)FUNを用いて解説します。

仕様
スイッチ緑を押すと、構造体型変数WorkData00の値をWorkData01に転送する。
スイッチ黄を押すと、構造体型変数WorkData01の値をWorkData00に転送する。
スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理を適用する。
構造体は「WorkData」とし、メンバはワーク有無、品種、検査結果とする。(詳細は構造体「WorkData」に記述)

転送(MOVE)FUNの転送元と転送先に構造体型変数(全体)を指定します。

タッチパネルの動作イメージ

タッチパネルの動作イメージは以下のようになります。

例題③_タッチパネルイメージ

スイッチ緑を押すと構造体型変数WorkData00の値をWorkData01に転送します。スイッチ黄を押すと構造体型変数WorkData01の値をWorkData00に転送します。

スイッチ緑と黄を両方押した場合、後から押された処理が適用されます。

使用する変数

使用する変数は以下になります。

変数データ型コメント
R_TRIG1R_TRIGFBインスタンス
R_TRIG2R_TRIGFBインスタンス
SwGreenBOOLスイッチ緑
SwYellowBOOLスイッチ黄
WorkData00WorkDataワークデータ00
WorkData01WorkDataワークデータ01

データ型WorkDataの内容は構造体「WorkData」に記述します。

構造体「WorkData」

構造体「WorkData」する変数は以下になります。

変数データ型コメント
ExistUINTワーク有無
TypeSTRING[15]品種
ResultREAL検査結果

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題③_ラダープログラム

立ち上がり検出(R_TRIG)を使用することにより、各スイッチの立ち上がり(FALSE→TRUE)を検出した時のみ転送(MOVE)FUNが実行されます。※【例題①②】と同様

転送(MOVE)FUNの転送元と転送先に構造体型変数(全体)を指定することにより、構造体のすべてのメンバが転送されます。

ST言語

ST言語は以下のようになります。

ST言語
//スイッチの立ち上がり検出
R_TRIG1(CLK := SwGreen);
R_TRIG2(CLK := SwYellow);

//スイッチ緑の立ち上がりでWorkData01にWorkData00を転送
IF R_TRIG1.Q THEN
	WorkData01 := WorkData00;
END_IF;

//スイッチ黄の立ち上がりでWorkData00にWorkData01を転送
IF R_TRIG2.Q THEN
	WorkData00 := WorkData01;
END_IF;

5. おわりに

キーエンスKV-X500/X300シリーズにおける転送(MOVE)FUNについて解説しました。

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