【ノウハウ初級】長時間タイマのラダープログラム例【三菱FX】

00_【ノウハウ初級】長時間タイマのラダープログラム例【三菱FX】

三菱電機製シーケンサFXシリーズでは、入力条件がONしている時間をPLC内部で加算し、設定値に達すると接点が動作する『タイマ』と呼ばれるデバイスが用意されています。

タイマはデバイス番号によって、100ms・10ms・1ms形に分類されます。(1msは0.001秒)

100ms形を用いた場合でも、タイマ単体では最大3276.7秒(約54.6分)までしかカウントすることができません。

数時間~数十時間(またはそれ以上)の長時間をカウントする場合、『複数のタイマ』や『他のデバイス』を使用する必要があります。

この記事では、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける長時間タイマのラダープログラム例を2ヶ解説します。

注意
この記事中のラダープログラムはGX Works2で作成しており、PCタイプはFX3G/FX3GCに設定してあります。
注意
記事中の「長時間タイマ」とは、長時間カウントすることができるラダープログラムを指します。長時間タイマというデバイスが存在する訳ではありません。

三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるタイマについては以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_【三菱FXシリーズ】タイマ(T)の使用方法とラダープログラム例【三菱FXシリーズ】タイマ(T)の機能と動作例

1.【例題①】複数のタイマを用いた長時間タイマ

下記仕様の長時間をカウントするラダープログラムを解説します。

仕様
スイッチ(X0)を押すと、5000秒後にランプ(Y0)が点灯する。
スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y0)を消灯させるとともにカウント中のタイマをリセットする。

三菱電機製シーケンサFXシリーズでは、100msタイマを用いても最大3276.7秒までしかカウントすることができません。

そこで、今回は3000秒と2000秒のタイマを1ヶずつ用意します。

3000秒のタイマがONすると、2000秒のタイマのカウントをスタートさせるイメージです。

GOTの動作イメージ

GOTの動作イメージは以下のようになります。

メモ
GOT(グラフィックオペレーションターミナル)とは、三菱電機製タッチパネルのことで生産現場や工場設備で広く使用されている製品です。
ここでは「GOTはラダープログラムで使用されているデバイスのON/OFF状態や現在値をモニタしたり、変更することができるもの」程度の認識でOKです。
例題①_GOT

※とても5000秒も待っていられないので、5秒にしてあります。紛らわしかと思いますがご了承くださいm(__)m

スイッチ(X0)を押すと、5000秒後にランプ(Y0)が点灯します。スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y0)を消灯させるとともにカウント中のタイマをリセットします。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題①_ラダープログラム

スイッチ(X0)が押されるとONする自己保持回路を作成します。(補助リレーM0)

例題①_ラダープログラム解説1

M0は自己保持回路になっており、X0がONするとM0がONし続けます。

M0がONすると、ラダープログラムは以下のように動作します。

例題①_ラダープログラム解説2
  1. M0がONする
  2. M0のa接点がONするとT0がカウント開始
  3. 3000秒経つとT0のa接点がON
  4. T0のa接点がONするとT1がカウント開始
  5. 2000秒経つとT1のa接点がON
  6. T1のa接点がONするとY0がON(ランプ点灯)

T0とT1は共に100ms形のタイマであるため、設定値をK30000と指定すると3000秒となります。(30000×0.1秒=3000秒)

T0とT1を合わせると5000秒(3000秒+2000秒)となるため、スイッチ(X0)を押してから5000秒後にランプ(Y0)が点灯します。

スイッチ(X1)が押されると、M0の自己保持がOFFしてT0・T1・Y0が芋ずる式にOFFします。Y0がOFFするとランプが消灯します。

2.【例題②】カウンタを用いた長時間タイマ

下記仕様の長時間をカウントするラダープログラムを解説します。※例題①と同様です。

仕様
スイッチ(X0)を押すと、5000秒後にランプ(Y0)が点灯する。
スイッチ(X1)を押すと、ランプ(Y0)を消灯させるとともにカウント中のタイマをリセットする。

【例題①】ではタイマを2ヶ使用して5000秒を作りました。この手法だと使用するタイマの数が多くなってしまいます。

そこで、今回はタイマ1ヶとカウンタを用いて同じ動作をするラダープログラムを作成します。

カウンタとは、入力条件がONした回数を数えるデバイスです。三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるカウンタについては以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。

00_【三菱FXシリーズ】カウンタ(C)の使用方法とラダープログラム例【三菱FXシリーズ】カウンタ(C)の機能と動作例

GOTの動作イメージ

GOTの動作イメージは以下のようになります。

例題②_GOT

【例題①】と同様、イメージなので5秒後に点灯します。

ラダープログラム

ラダープログラムは以下のようになります。

例題②_ラダープログラム

【例題①】と同様、M0の自己保持回路を作成します。

例題②_ラダープログラム解説1

M0を入力条件とする、設定値が10秒のタイマT0を用意します。

例題②_ラダープログラム解説2

T0の入力条件にはT0自身のb接点があるため、T0は10秒経つと一瞬だけONしてすぐにOFFします。このようなタイマをクロックパルスと呼びます。

このクロックパルスT0はM0がONしている間、10秒毎に一瞬だけ繰り返しONします。

クロックパルスがONすると、ラダープログラムは以下のように動作します。

例題②_ラダープログラム解説3
  1. T0のa接点が10秒毎にONする
  2. C0はT0がONした回数をカウントする
  3. C0の設定値である500回カウントするとC0のa接点がON
  4. C0のa接点がONするとY0がON(ランプ点灯)

カウンタC0は「10秒毎にONするT0」を500回カウントするとONするため、結果としてスイッチ(X0)を押してから5000秒後にランプ(Y0)が点灯します。(10秒×500=5000秒)

一度ONしたカウンタをOFFするには、リセット(RST)命令を用いる必要があります。スイッチ(X1)を押すとM0の自己保持回路をOFFするとともに、C0をリセットします。

例題②_ラダープログラム解説4

三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるリセット(RST)命令については以下のページで解説しております。

00_【三菱FXシリーズ】セット(SET)・リセット(RST)命令の指令方法とラダープログラム例【三菱FXシリーズ】セット(SET)・リセット(RST)命令の指令方法とラダープログラム例

三菱電機製シーケンサFXシリーズで作るクロックパルスについては以下のページで解説しております。

00_【ノウハウ初級】クロックパルスのラダープログラム例【三菱FX】【ノウハウ初級】クロックパルスのラダープログラム例【三菱FX】

3. おわりに

三菱電機製シーケンサFXシリーズで作成する長時間タイマのラダープログラム例を解説しました。

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ラダープログラムの一番現実的な学習方法は「実務で経験を積む」ことです。電気・制御設計者はこれから更に必要な人材になり続けますので、思い切って転職する選択肢もあります。

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