「交番出力」命令とは、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるビットデバイスのON/OFFを反転するラダープログラム命令です。
交番出力命令を用いることにより「入力がONするたびに出力が切り替わるオルタネイト回路」や「一定周期でランプが点滅するフリッカ回路」を簡単に作ることができます。
この記事では、三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける交番出力命令の指令方法とラダープログラム例について解説します。
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおいて、交番出力命令は以下のシーケンサ・バージョンで使用することが可能です。
FX3S | :Ver1.00以降 |
FX3G | :Ver1.00以降 |
FX3GC | :Ver1.40以降 |
FX3U | :Ver2.20以降 |
FX3UC | :Ver1.00以降 |
目次
1. 交番出力命令の指令方法
交番出力命令には、2種類の指令方法があります。
ALT | :連続実行形 |
ALTP | :パルス実行形 |
ALTは、交互(Alternate)の略です。
パルス実行形は、入力条件がONしたときの1スキャンのみ実行される命令です。
ALT:連続実行形(基本の形)
連続実行形の交番出力命令は”ALT”と指令します。
こちらがALT命令を使用したラダープログラム例です。
![10_ALT命令](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/06/10_ALT命令.png)
このラダープログラムは、入力条件である入力リレーX0がONしている間、出力リレーY0のON/OFFを毎スキャン反転し続けるものです。
![10_タイムチャート](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/06/10_タイムチャート.png)
ラダープログラムが1スキャンに掛かる時間はとても高速なため、↑のラダープログラムではY0は高速でON/OFFを繰り返します。
入力条件がONするたびに出力条件のON/OFFを切替える場合、入力条件をパルス化するか、後述するパルス実行形のALTP命令を使用する必要があります。
入力条件をパルス化する手法は幾つか存在します。以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
![00_【三菱FXシリーズ】パルス(PLS・PLF)命令の指令方法とラダープログラム例](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/03/00_【三菱FXシリーズ】パルスPLS・PLF命令の指令方法とラダープログラム例-160x160.png)
![00_【三菱FXシリーズ】立上り・立下りパルス接点(LDP・LDF)命令の指令方法とラダープログラム例](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/05/00_【三菱FXシリーズ】立上り・立下りパルス接点LDP・LDF命令の指令方法とラダープログラム例-160x160.png)
先ほどのラダープログラムはGX Works2の回路上で ALT Y0 と入力してEnterキーを押すと命令が挿入されます。(小文字でもOKです。)
![10_命令挿入](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/06/10_命令挿入.gif)
ALTP:パルス実行形
パルス実行形の交番出力命令は”ALTP”と指令します。
こちらがALTP命令を使用したラダープログラム例です。
![11_ALTP命令](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/06/11_ALTP命令-1024x126.png)
連続実行形(ALT命令)との違いは、入力条件である入力リレーX0がOFF→ONになった瞬間に1回だけ出力リレーY0の状態が反転することです。
つまり、X0がONするたびにY0のON/OFFが切替わります。
![11_タイムチャート](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/06/11_タイムチャート-1024x276.png)
入力条件がONした後の1スキャンのみ実行されるので、入力条件をパルス化する必要はありません。
2.【例題①】立下りパルスのオルタネイト回路
下記仕様のラダープログラムを交番出力命令を用いて解説します。
押して離した瞬間はON→OFFになったとき、言い換えるとOFFになった瞬間です。色々は手法がありますが今回は”立下りパルス接点”を使用します。
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
![例題①_GOT](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/11/例題①_GOT-4.gif)
スイッチ(X0)を押して離した瞬間に、ランプ(Y0)の点灯/消灯が切り替わります。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
![例題①_タイムチャート](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/06/例題①_タイムチャート.png)
X0がONしている時間に関わらず、OFFになった瞬間にY0の状態が切替わります。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
![例題①_ラダープログラム](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/11/例題①_ラダープログラム-9-1024x124.png)
スイッチ(X0)を押して離した瞬間にのみONするX0の立下りパルス接点を使用します。※立下りパルス接点は接点の中に下向き矢印が入っています。
これにより、X0がOFFした後の1スキャンのみALT命令が実行されます。
3.【例題②】フリッカ回路
下記仕様のラダープログラムを交番出力命令を用いて解説します。
※点灯:1秒、消灯:1秒
よくあるフリッカ回路(点滅回路)ですが、今回はタイマと交番出力命令を用いて作成します。
ラダープログラムにおけるタイマとは、入力条件がONしている時間をPLC内部で加算し、設定値に達すると接点が動作するデバイスです。
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおけるタイマ(T)の機能と動作例は以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
![00_【三菱FXシリーズ】タイマ(T)の使用方法とラダープログラム例](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/02/00_【三菱FXシリーズ】タイマTの使用方法とラダープログラム例-160x160.png)
GOTの動作イメージ
GOTの動作イメージは以下のようになります。
![例題②_GOT](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/11/例題②_GOT-4.gif)
スイッチ(X0)を押している間、ランプ(Y0)が2秒周期で点滅します。
タイムチャート
タイムチャートは以下のようになります。
![例題②_タイムチャート](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/06/例題②_タイムチャート.png)
X0がONしている間、Y0が2秒周期でON/OFFを繰り返します。
ラダープログラム
ラダープログラムは以下のようになります。
![例題②_ラダープログラム](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/11/例題②_ラダープログラム-7-1024x248.png)
X0が入力条件のタイマT0を用意します。このT0のb接点で自身をOFFすることにより、T0のa接点は1秒周期で1スキャンのみONします。
![例題②_ラダープログラム解説](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/05/30-コピー.png)
1秒周期でONするT0のa接点を用いて、ALT命令を実行するとY0が2秒周期でON/OFFを繰り返します。
フリッカ回路(点滅回路)は交番出力(ALT)命令を使用せずにタイマのみで作ることができます。フリッカ回路については以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
![00_【ノウハウ初級】フリッカー回路(点滅回路)のラダープログラム例【三菱FX】](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/02/00269_【ノウハウ初級】フリッカー回路点滅回路のラダープログラム例【三菱FX】-160x160.png)
![00_【ラダープログラム】フリッカー回路の練習問題①【三菱FX】](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/04/00_【ラダープログラム】フリッカー回路の練習問題①【三菱FX】-160x160.png)
![00_【ラダープログラム】フリッカー回路の練習問題②【三菱FX】](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2019/04/00_【ラダープログラム】フリッカー回路の練習問題②【三菱FX】-160x160.png)
因みに、【例題②】で用いた一定周期でONするパルス信号を”クロックパルス”と呼びます。クロックパルスについては以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
![00_【ノウハウ初級】クロックパルスのラダープログラム例【三菱FX】](https://denkisekkeijin.com/wp-content/uploads/2020/02/00_【ノウハウ初級】クロックパルスのラダープログラム例【三菱FX】-160x160.png)
4. おわりに
三菱電機製シーケンサFXシリーズにおける交番出力命令について解説しました。
例題①と②でオルタネイト回路とフリッカ回路について解説しました。交番出力命令は「出力がONしたまま入力条件をOFFすると出力はONしたままになる」という潜在的な危険性を含む命令になりますので、使用する場合はご注意ください。
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